第277回
「苦しいときの旧友だのみ」
私がネットの古本屋さんである門脇伸行さんと
知り合いになったきっかけは
大学時代の同級生で、親しくさせていただいた
石和田洋さんという人を40年ぶりに訪ねたことです。
どうして40年も無沙汰が続いていた友人を
訪ねたかというと、昨年夏、
この“ハイQ”で連載を書かないかと打診を受け、
喜んで引き受けさせていただきますと即答したものの、
しばらくすると、はたして
毎日の原稿を届けられるだろうかと
心配になってきました。
そういう心配をふっとばすには、
心が通じる友人とあって悩みを話し
それを笑い飛ばすのが一番と思い、
私はその友人に石和田さんを選んだのです。
どうして石和田さんを選んだかというと、
大学三年生のときのことですが
毎日新聞社がアジアの経済について
懸賞論文を募集しました。
私は応募するため、にわか勉強をして原稿を書きましたが、
書いた文章に全く自信がありません。
たまたま親しくしている石和田さんは
文芸の世界に通じていて、文才も豊かです。
私は自分の書いた原稿を石和田さんに見てもらい
原稿に手を入れていただき、
そのおかげで私の原稿が合格作品の一つに選ばれ、
賞金1万円を手に入れたのです。
そんないい思いをさせてくれた石和田さんは
大学卒業ののち、総理府の役人になり、
イギリスに留学しました。
イギリスから帰国した頃までは交流が続きましたが、
進路が異なったこともあり、いつのまにか
手紙も年賀状も出さないようになっていました。
その石和田さんが平成9年頃、
駐ウルグアイ大使になり、
私が勤めていた新日鐵の技術協力部長が
ウルグアイで大使を務めている石和田さんを訪ねると
「戸田君はどうしていますか?」
ときいてくださったとのことで、
気にかけてくれているんだなと思いました。
が、私自身は第二の人生の開拓に忙しく、
再会してゆっくり話をしようという余裕をもてないままに
毎日を送っていました
そんな私に、“ハイQ”への連載の話が舞い込み
日刊ペースで原稿を提供できるかな
という不安感を払拭するために
40年ぶりに石和田さんに電話を入れたのです。
さきに「古い友人もいいが新しい友人はもっといい」
という邱さんの言葉を引用しましたが、
「古い友人」には「新しい友人」にはない
魅力があることも事実ですね。
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