第274回
「お金に支配されている人には『知足』という処し方が必要」
『デフレに強い知的金銭生活』を読むと、
「足るを知る」という心構えが大事だ
という提言に出会いましたが、
ふと 私は昭和59年に出版された
『金銭処世学』という本のことを思い出しました、
この本にもたしか、『足るを知る』という態度を
身につけることが大切だと書かれていたからです。
さっそく、この本を手にとって
最後のところを開くと、
次のような文章が飛び込んできました。
「平均的に日本人の所得水準が上がり、
日本人全体が成金の過程を通りこして、
金持ち国民として定着するようになれば、
好むと好まざるとにかかわらず、
金持ち国民としての責務を果たさなければならなくなるし、
明けても暮れても、『お金、お金、お金』と
お金のあとばかり追いかけていては人から笑われる。
ここまでくれば『足るを知るべし』ということが、
金持ち国への道を歩み始めた行動の
ブレーキとして働くことになる」
外貨がドンドンたまり、不動産も株も上がる
という時代傾向の中で邱さんは
『足るを知る』という考えを持つことが
大事ですよ語っているのです。
「金儲けは人の心を満足させるために必要な行為であり、
しばしば生きるための必要悪でもある。
だから、その必要に迫られている人たちが、
全知全能を傾けて邁進するのはごく自然の動きであろう。
しかし『欲望は無限であり、欲望を充足する手段は有限である』
というのが経済学のはじまりである。
確かに、欲望を充足しようとしても、
充足の手段に限りがあるから、
いくら努力しても思い通りに充足できるとは限らない。
それだけに充足ができれば、満足感もあり、充実感もある。
そういう生活をくりかえしていると、
そのうちに病が嵩じて、金が儲かることよりも、
金儲けという行為そのものに喜びを感ずるようになる」
(『金銭処世学』)
人間のこうしたいとなみを
自然な行為として邱さんは是認しますが、
一方で、お金というものはあるレベルを越えれば
いくらふえても心理的にも実用的にも
役に立たなくなるものですよ、
にもかかわらず時に、お金に心を奪われ、
まるでお金にコントロールされているような人を見かけますが、
これはどういうことですか、
「そういう心境の人に一服盛るとすれば、
やはり『知足』という処し方しかないだろう」
(同上)
と邱さんは昭和57、8年ごろ書いているわけです。
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