第262回
邱さんの「借金のすすめ」には説得力がありました
私が邱さんの本を読むようになったのは
今から4半世紀前のことですが、
邱さんから教えてもらったことの一つは、
世の中はインフレ傾向が続いているから
借金をして不動産を手に入れるのが
合理的ではないかというものでした。
私は昭和54年ころに邱さんの本を読みだしましたが、
この邱さんの提言はそのずっと前から行われていたもので、
昭和33年ごろに執筆のはじまった『キチガイ日本』
(のち「クレイジー日本」に改題)には
「借金のすすめ」が書かかれています。
まだ日本でもローン制度がなかった頃のことです。
私などは「借金のすすめ」が書かれて20年もしてから
この考えにふれたことになるわけですが、
私は「借金のすすめ」に目の覚めるような新鮮さを感じ、
借金をテコにしてマンションを手に入れました。
インフレがいかに長い期間のあいだ続く
トレンドであったかということです。
私など自分だけがこんな結構な考えを享受しているのは
申し訳ないと思いましたので、
親しくしている友人たちに
邱さんの考え方を紹介しました。
私が紹介した友人たちには、
借金なれした商売人の子供として育った人もいましたが、
「なるほど、これは良い考えですね」といって
受け入れるような人はいませんでした。
みんなお金を借りることに警戒的で、
お金を返済できなくなったりしたら
たいへんだと怖がったのです。
ところが、それから10年ばかりすると
日本国中にお金があまるようになり、
不動産が極端に高くなり、銀行がサラリーマンにまで
「お金を借りてください」と言うようになると、
お金を借ることに対する警戒感が薄らぎ、
お金を借りて賃貸向けの不動産を買うことが
一種のブームになりました。
その後、一転して経済全体がデフレ基調に傾き、
買った不動産の価値が大きく下落し、
勤めている会社の稼ぎも悪くなって、
給与もボーナスも下がるようになったので、
これじゃあ退職金を全額払っても借金を返せないと
嘆く人があらわれるようになっているわけです。
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