第255回
「年をとっても仕事はやめない」
邱さんは63歳になったとき『死ぬまで現役』の執筆にかかり、
年をとっても年をとらない生き方をするには、
変化のある環境をつくりだすことで
その第一の方法は新しい仕事を手がけることだと書いています。
「新しい仕事が次々と控えていると、
それが頭の痛い内容のものであっても、
人間はぼやぼやしているわけにはいかない。
私などは39度の熱を出していても、
いったん、演台の上に立つと、シャンとなって姿勢がよくなる。
だから常に新しい仕事をつくり出すか、
新しい趣味をみにつけて、それに熱中する必要がある」
(『死ぬまで現役』)
そして邱さが68歳になって執筆した『みんな年をとる』では
「年をとっても仕事はするぞ」と宣言しています。
「年をとっても私の事業欲は衰えない。
学校時代のクラスメートの大半は第一線を退き、
なかには死んでしまった人も多いというのにである。
どうしてかというと自分自身、
過ぎ去ったことに興味を持たず、
未来のことばかり考えて生きてきたからである。
その惰性がいまも続いているのであろう。
もう一つは、私がいまやっている事業を
生活の資を得る手段として考えておらず
趣味か道楽くらいに思ってやってきたせいであろう。
サラリーマンで自分の仕事を
趣味としてやっている人はそういないだろう。
仕事は生活の資をえるためで、
趣味や道楽はまた別にもっている。
マージャンが趣味の人もあれば
スポーツが趣味の人もある。
そういう人が上司に文句を言われない程度に仕事をこなし、
少しヒマを見つけると趣味や道楽に走る。
趣味や道楽だけが人生の生きがいではないが
本業で満たされない分を補って心の充実をはかる。
私の場合はサラリーマンにならないで、
自分がやりたいと思った仕事を
自分の仕事として選んだので、
趣味と仕事がごっちゃになってしまった。
いくら趣味で選んだ仕事でも、仕事である以上、
生活の資は得なければならないが、
幸いにも、文章書きという仕事は
生活に必要なお金をもたらしてくれたし、
以後、興味を持って手を出した株式投資や
さまざまの事業もそれなりに儲けをもたらしてくれた。
だから趣味や道楽の範囲が広がっている上に、
それをやらなければ生活に困るということがないために、
やること全部がごっちゃになっている上に、
それをやらなければ生活にこまるということがないために、
やること全部が趣味でやっているようなところがある。
大抵の人が年をとって仕事をやめたら、
趣味に生きる道を選ぶが、
私のように最初から趣味として仕事を選んだ人は
年をとったからといって仕事をやめることはできない。
仕事をやめてしまったら、あとやることがなくなって
死んでしまうよりほかなくなってしまう。」
(『みんな年をとる』)
このエッセイを書かれてから約10年たったところで
邱さんのスピーチを聞く機会をいただいたわけですが、
基調に変化はないように見受けました。
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