| 第230回「調子に乗るな、鉄則を守れ」
 バブルが盛んなころ、雑誌や新聞もこぞってマネー欄を充実していました。
 さて、その欄を誰がうめるかですが、
 お金の話をさせたら、
 右にでる人はないという判断からでしょう、
 邱さんは乞われて多くの場面で執筆しました。
 そういう外観に幻惑され、私の周辺でもまれに、
 邱さんはバブルを演出した一人ではないかと
 思っている人がいますが、そんな風に思う人は
 邱さんの文章を全く読んでいない人です。
 次の文章は平成9年に出版された
 『ダメな時代のお金の助け方』の一節ですが、
 邱さんがブレーキをかけるのが
 上手な人であることがわかります。
 「私は不動産に投資をする時、必ず利回りを計算し、もし家賃で借入金の返済が払えなかったら、
 投資は控えろというルールを自分に課した。
 この鉄則を私は成長経済の時代にも守ったが、
 いまも守っている。
 また国内の投資をする場面でも守ったし、
 海外で投資をする場合も守っている。
 だから、バブルの発生によって地価や建築費が上がり、
 買い入れたマンションの家賃収入が
 投資額の3%とか4%まで下がってしまうと、
 私はどんなに誘われてもマンションを買わなかったし、
 また土地を買ってマンションを建てることもしなかった。
 ところが、世間の人を見ていると、
 熱気にあてられたように、ブームが起こると
 そのブームがいつまでも続くような錯覚におちいる。
 利回りにはのらなくなったが、
 株だって買う人があればまだまだ上がる。
 土地にしても、マンションにしても、
 買い人気が続く限り、買う人は現われるし、
 買う人があれば、業者は仕込みを続ける。
 そういう余熱はなかなか下がらない。
 しかし、既に採算点をこえてしまった投資は
 コントロールを失った風船のようなものだから、
 どこかで破裂しないではおれないはずである。
 そう思ったので、私は家賃の利回りが預金金利の6%を割るようになると、
 マンションを買うのもやめてしまったし、
 土地を買うのもやめてしまった。
 おかげでバブルの崩壊による破滅的な被害は受けないですんだ」
 (『ダメな時代のお金の助け方』平成9年)
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