| 第224回「最悪の事態になったときのことも考えておくこと」
 平成7年、邱さんは『商売の原則』を再版しました。この本には「最悪の事態になったときのことも考えておくこと」
 という邱さんの考え方が具体的に書かれています。
 「小さな商売の場合には、一つのメドは3年と考えるといいでしょう。
 3年以内に、ある程度ソロバンが成り立たないようなら
 考え直す必要があるということです。
 逆に、それまでに最初にくらべて、実際の戻りが速ければ、
 成功と考えてよいでしょう。
 予定していた損より、ちょっとでも赤字が大きくなれば、
 初めての人は青くなるでしょう。
 最初から3年計画で、かなりシビアに赤字を計画していれば、
 何も心配することはないのですが、
 つい楽観的な見方をするからなんです。
 とくに、女性の場合は、夢見がちなせいか、
 当初の予定と現実の違いに
 打撃を受けることが多いんじゃないでしょうか。
 損の計算をしっかりしなさい−これは私がいつも強調することなんです。
 それができない人は、商売で成功することは
 難しいといっていいでしょう。
 ところが、自分ではなかなかわからないから、
 いい夢ばかり見て、商売を始める。
 結局、だれかが尻ぬぐいをしなくてはならないことになるんです。
 損がここまできたら、そのとき自分は、どういう位置にいるか。
 いよいよダメなら、やめるしかない。
 自分はあまり商売に向いていないから、
 もっと商売のうまい人の助手のような仕事でもしよう。
 それでも、なんとか食っていけるだろう
 −そのへんまで真剣に考えないと、
 新しい商売に入れないんじゃないかと思います。
 いいかげんな見通しではじめると、落とし穴はたくさんあります。
 たとえば事務所なり店なりを借りるときに、いいところがあったと、ろくに契約書も見ないで、
 はんこをおす人がいる。
 いざ商売がまずくなって、
 保証金を返してもらおうとしたら、契約書には
 『このお金は10年間返しません』と書いてある。
 『あなた、ハンコおしたじゃないの』と言われて、
 グウの音も出ないんです。(略)
 商売を始めるときは、3年後を一つの目標にして、損の計算をしっかりしておく。
 最悪の事態になったときのことも考えておくこと
 そこまで計算しておけば、かなり赤字がつづいたときでも
 追い詰められることは少ないし、
 黒字にするための新たな手も打てるかもしれない」
 (『商売の原則』 平成7年)
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