第222回
「IBMはミニマックス原理を応用して大を成しました」
邱さんによれば、IBMはこのミニマックス原理を応用して
大をなしたとのことですが、
唐津一さんは『かけひきの科学』(平成8年)で
そのことについて書いています。
寄り道をして、唐津一さんの解説をのぞいてみましょう。
「IBM社は、汎用コンピュータで
世界の電子計算機の70%を占めた時代があった。
しかしIBM社は当初から強力だったからではない。
その歴史を調べてみると、不思議なことに、
不況のときにかぎって、その市場を拡大しているのである。
なぜか。不況だからといって需要がゼロになるということはない。
むしろ、不況になればユーザーは商品を買う際、
十分吟味するようになる。
実はIBMはこのようなときにかぎって
すばらしい新型の計算機を出すのである。
すると客がいっせいに飛びついてくる。
こうして拡大した占有率は、
たとえ好況になっても維持はできる。
好況のときは放っておいても売れるから、
無理に売らなくてもよいのだ。
その間に十分実力をたくわえ、
次の不況期にふたたび占有率を拡大する。
このようにしてIBMは大を成したのである。
IBMのこの戦略は、ゲームの理論における
ミニマックス原理の応用と考えてよい。
つまり、不況期に間違って製品がストックになったとしても、
いままでにない最新機のストックをもってさえいれば、
需要が出ればと飛ぶように売れるのである。
逆に不況だからといって、新製品開発のコストをケチり、
冴えない製品を出せば、それはジリ貧になってしまう。」
(唐津一『かけひきの科学』PHP新書 平成8年)
つまり、IBMは売れ行きの落ちる場面で、
損を最小限に食い止めるために最新機を市場に投入し、
結果としてそれがうまく行ったということですかね。
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