| 第221回「マキシムのリスクをミニマムにする」
 邱さんが本や雑誌でしばしば対談し、邱さんの作品の解説も書かれておられる方に
 唐津一さんという人がいます。
 この唐津一さんがPHP新書として出版した
 『かけひきの科学』(平成8年)とか
 『ビジネス難問の解き方』(平成14年)のなかで
 「ミニマックスの原理」について解説しています。
 「不確実性のリスクに備えるための提案されたのが、『ミニマックスの原理』というものである。
 これは、ノイマン型と呼ばれる
 現在のコンピュータの原理を考えた
 数学者のジョン・L・フォン・ノイマンと
 経済学者オスカー・モルゲンシュタインが体系づけた
 『ゲームの理論』のなかの重要な戦略の一つである。
 解決策の選択肢がいくつかあり、状況の変化や競争相手の出方を予測して、
 そのどれを選ぶかというときには、
 成功した場合のことばかり想定して、
 最適案をえらぶのがふつうである。
 たとえば、Aという状況下ではX案で行けばいい、状況がBに変わればY案で行くのが有利だといった具合である。
 しかし、競争相手も合理的に予測し、
 こちらの手の内を見抜こうとしているわけだから、
 そう都合よくいくとは限らない。
 最大利益を追求して予測していると、
 まかり間違って予想外の方向に転んだときにはお手上げで、
 逆に最悪の損害をこうむりかねない。
 そもそも問題解決における決断には、二種類の不確実性を考えておかなければならない。
 一つは、競争相手がどんな手を打ってくるか、あるいはこちらの手の内が読まれているかがわからないという、
 かけひきに由来する不確実性である。
 もうひとつは偶然性という不確実性が存在する。『ミニマックスの原理』はこの二つの不確実性を想定し、
 それに伴うリスクを極小化するための手法なのである。
 そこで成功したときに
 どれだけのメリットが出るかを考えるのではなく、
 それとは反対に、うまくいかなかったときに
 どれだけの損失を抑えられるかを考えて手を打つ
 ーすなわち、最悪の場合を想定するのが
 ミニマックス原理の基本的な考え方である。
 マキシムのリスクをミニマムにするというところから、
 こう名づけられた。」
 (唐津一『ビジネス難問の解き方』PHP新書。平成8年)
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