| 第213回「仕事師肌の人は新しい第二の人生をスタートできる」
 前回に紹介した『私は77歳で死にたい』のなかの文章の続きです。
 「会社勤めをやっていると、辞令一本で職場を変わるから、どうしても受動的な生き方に慣れてしまう。
 自分の職場も上司が決めるし、
 やる仕事も人に決められてしまう。
 そうなると、自分の行動半径も、
 つきあう人の種類もしぜんに決まってしまう。
 長い間、そういう生活をくりかえしていると、
 それが習い性になって、
 自分のやるべきことを自分で決められなくなる。
 そういう人は、定年後も会社の人事が手配してくれたコースを
 また歩むことになることが多い。
 もっとも会社勤めをしている人のすべてが受動的な仕事ぶりに終始しているとは限らない。
 最初は与えられた仕事からはじまるけれども、
 仕事をやっているうちに要領を身につけるようになり、
 自分で自分の仕事が面白くなって、
 時間がたつのを忘れるようになる。
 そういう幸運に恵まれた人は、
 やがて社内でその能力を認められ
 出生街道を歩むようになることは間違いない。
 しかし、そういう人でも、
 定年を迎えることにおいては何の変わりもない。
 役員に昇進することによって定年が2年か3年、先に延びることはあっても、
 定年がやってくることに変わりはないのである。
 ただそういう仕事師肌の人は、
 自分で仕事をつくり出す能力がある人であるから
 仕事をやりたければ仕事を見つけることができるし、
 この際仕事から離れたいと思っているのなら
 まったく新しい第二の人生をスタートさせることも
 困難なことではない。
 問題はその受動的な生き方をしてきた人が
 どうやって定年後の人生を送るかである。」
 (『私は77歳で死にたい』)
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