| 第205回日下さん曰く「客観的条件+主体的努力=結果」
 いま評論家として活躍している日下公人さんの存在を知ったのは、邱さんの『お金の使い方』という本でした。
 この本で邱さんは日下さんの初期の作品『新・文化産業論』
 という本を推奨しました。
 私は早速、読み、以来、日下さんの本も出版される都度
 読むようになりました。
 昭和56年頃に出版された日下さんの著作に『日本経済“やる気”の研究』という本があります。
 日下さんはこの本で、物事の結果は、
 当事者が置かれた状況にも左右されるが、
 当事者がどういう努力をしたかによっても
 大きく変わると指摘し
 「客観的条件+主体的努力=結果」
 という図式を示しました。
 日下さんによれば、学校の先生はとかく物事を科学的に説明しようとする性癖をもち、
 人間の意欲とか努力といった不確かな要因をはずし、
 当事者が置かれた客観的な条件で物事の結果が決まる、
 つまり「客観的条件=結果」の要領で
 物事を説明しようとするとのことです。
 たとえば、私などが子供の頃、学校の先生は、日本は貧乏な国であるという説明に
 資源がないとか、周囲を海に囲まれ物資の輸送に不便だ、
 といったことを要因として挙げていました。
 「客観的条件=結果」スタイルの説明ですね。
 しかし日本はいつのまにか金持ち国になりました。日本が資源がなく、周囲を海に囲まれているのは
 昔も今も変わりありませんが、
 日本人はそのハンディを逆手にとって、
 資源の豊かな国から海路、原料を仕入れ、それを加工して
 付加価値の高い製品をつくりだすようにしたからです。
 これを説明しようとしたら
 「客観的条件+主体的努力=結果」
 と表現しなければなりません。
 日下さんはこの人間の「主体的努力」が重要ですよ、これを忘れてはいけませんというために、
 この図式を持ち出したのですが、
 「今は駄目でも、いつまでもだめではない、
 いつかは扉がひらかれる」という邱さんの言葉に
 日下さんが示した図式を重ねあわせると
 「今は駄目かもしれない。
 しかしやる気をだして努力をするうちに、
 やがてそれが実って、いつかは扉がひらかれる」
 という解釈が生まれ、
 理解が幾分か深まったような気持ちになりました。
 それにしても私なども、学校の先生のマネをして「客観的条件=結果」の要領で
 物事を説明しようとするところがあり、
 これは要注意だと自分を戒めているところです。
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