第197回
「今は駄目でもいつまでも駄目ではない」
邱さんの発想のなかには
「いまは駄目でもいつまでも駄目ではない」
という考えが織り込まれています。
私たちはよく「あの人は経験が無いから駄目です」とか
「私は経験がないので出来ません」とか言いますが、
邱さんは
「経験がないから駄目だ、と決めつけるのはおかしい」
と言います。
「はじめての人は経験がないのは当たりまえである。
昨日のぺいぺいだって大関になれば、
大関相撲がとれるようになるし、
横綱になれば横綱相撲がとれるようになる。
その代わりチャンスを与えられたにも拘らず、
充分、ファンの期待に副えなければ、
たちまちすべりおちてどこかへ消えてしまう。
経験がないから役目がつとまらない
という論理は成り立たないのである。
それどころか、世の中は変転きわまりのないもので、
王座に就いてきた者が
いつまでも王座を守りきれるものではない。
あっという間に王座を追われ、追っ払った者が次の王座に就く。
次の王座に就く者は、少なくともその時点で、民心を把握し、
その支持を受けているのが前提となる。
支配者が替わると、政権も変わり、
今までタブーであったものがタブーでなくなる。
ある時点ではほとんど不可能に近いと考えていたことでも、
地球がまわっているうちに、いつの間にか、
できることになってしまうことがしばしばある。
だから、悲観するのは早すぎる。
とりわけ政治環境は、大多数の人がそれは駄目だと思えば、
やがて駄目になるし、こうなるのが正しいと思えば、
あっという間に、価値観が逆転する。
たとえば、天安門事件をこの目でみて、人々は怒りを感じ、
『こんな野蛮なことがどうして起こるのだ』
『もうこれで中国はおしまいだ』と怒ったり、
悲観したりする。(略)
しかし私はそういう考え方にはほとんど同調しない。
今は駄目でもいつまでも駄目ではない
というのが私の信念である。
世の中は次々と変わる。
皆が賛成すれば、すぐにも変革の時が来る。
もちろん、多少の待ち時間は必要だが、
世の中、いつまでも同じところにとどまって
いるわけではないのである。」
(「今は駄目でもいつまでも駄目ではない」
『金儲け・発想の原点』に収録)
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