| 第188回「問題意識をもって観察力を働かせることが大切です」
 先を読むには「世の中の動きに好奇心を持っていること」と並んで「問題意識をもって観察力を働かせることが大切だ」
 と邱さんは書いています。
 「問題意識」という言葉を手元にある辞書で引くと、
 「問題として大切であるという考え。自覚」とあります。
 いろんな辞書には色々な説明があって興味深いのですが、
 全体として、まえ向きの態度で物事を積極的に
 解決しようという姿勢を反映している言葉ですね。
 以下に「問題意識をもって観察力を働かせる」具体例として邱さんが『金儲け発想の原点』に書いた文章を引用します。
 昭和64年1月号から平成2年3月号までの間に執筆した文章です。
 香港が英国から中国政府に返還される1997年(平成9年)までに
 7、8年の年月を控える時点で、邱さんが
 「これから中国の香港化が進むのだ」と主張していた頃の文章です。
 私たちは、その後起こったことをよく知っている、ないしは
 知ろうと思えば何でもわかる立場にいるのですが、邱さんが
 書いた当時のことを思い浮かべながら読むことにしましょう。
 「問題意識というのは、ただそれを現象としてボンヤリ眺めているのでは、知識として頭には残っていても、
 行動の基準とはなりにくい。
 たとえば1997年に香港が大陸に返還されるが、
 香港在住のいわゆる香港人の大半は、
 中共政府に対して不信感を抱いているという認識を持っている。
 すると、1997年に向かって香港にどういう変化が起こるか、
 というのは私の問題意識の一つである。
 香港の人々は、中共の統治に不信感を抱いているので、
 中共の手に移る前に移民する人がふえる。
 (略)
 では移民が大量に出て行ったあとの香港はどうなるのだろうか。
 もぬけの殻になるのだろうか。
 中共を怖れる香港人があれだけ多いのだから、
 そうした香港人の常識に従えば、
 1997年以後の香港はポンペイみたいな廃墟になってしまう。
 しかし、香港人の常識だけが正しい常識ではない。
 常識はほとんど過去の体験の上に築かれたものであり、
 未来の変化を勘定に入れていない。
 社会は時と共に変化するが、真空を嫌うものであるから、
 真空になろうとする空間を次に埋めるものが必ず出てくる。
 香港から大量に人が出て行けば、
 その空間を必ず埋める人が集まってくる。」
 (「問題意識を持って変化の先を読む」。
 『金儲け発想の原点』《平成2年》に収録。)
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