| 第186回「先を読んでも実行力が伴わなければ口舌の徒で終る」
 『金儲け発想の原点』に記載されている「問題意識を持って変化の先を読む」の引用の続きです。
 邱さんは「先を読む」という行為を
 西の方への航海に乗り出したコロンブスの行為を
 ひきあいに出して説明しています。
 「海を見ていると、船が遠ざかるに従って水平線から船が姿を消して行く。
 経験によればそれは船が消えてなくなったわけではなくて、
 視界から遠ざかっただけのことである。
 視界から遠ざかったのは、
 我々の視力に限界があることももちろんだが、
 地球が丸くなっていて、
 真っ直ぐ前しか見ることができない視力の向こうに
 消えてしまうからである。
 船乗りの経験でそういう確信を得たコロンブスは、
 西へ西へと進めば、東へ出るはずだから、
 とスペインのイザベラ女王を説いて、
 その援助の下で西へ西へ向かって船をすすめた。(略)
 実利と冒険心は、いつの時代も仲の好いパートナーであって、イザベラの旺盛な投資意欲とコロンブスの冒険心が
 うまく意気投合したことが
 アメリカ大陸発見のきっかけになったのである。
 コロンブスにどのていどの企業家精神があったか、
 私にはわからないが、
 晩年、目がほとんど見えなくなってからも、
 航海をやめなかったというから、
 根っからの探検家魂の塊りみたいな人だったのであろう。
 船が水平線の向こうに消えて行くシーンは我々がふだん見ているごくありきたりの光景にすぎない。
 そこから無限の想像力を働かせ、地球の丸いことを確信し、
 しかもそれを見届けに行かないでおれないという情熱と、
 それを実行する勇気があればこそコロンブスは
 世界の歴史に名を残す先覚者になったのである。
 そうした先見性は、
 すべて新しい道をひらく人が要求されている
 資質であるが、いくら先見性があっても、
 実行力が伴わなければ、口舌の徒で終ってしまう。
 だから思ったことはすぐ実行に移す習慣を
 身につける必要がある。」
 (「問題意識を持って変化の先を読む」。
 『金儲け発想の原点』《平成2年》に収録)
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