第180回
昭和63年の時点で香港は『買いだ』と判断しました
香港の不動産の状況を知った邱さんは
香港がその後たどる運命に思いを寄せ、
自分なりに見通しを明らかにします。
「香港の将来が香港の人たちが考えているような
悲劇的なものでなければ、
香港の不動産は『買い』ということになるし、
反対に『ゴースト・タウンになる』とすれば
『売り』ということを担ってしまう。
果たしてどちらであろうか。
先ず第一に考えられることは、
香港を繁栄の状態においておくこと、
息の根をとめるようなやり方をするのと、
どちらが中国にとってトクかと言うことであろう。
中国の要人に会ってこの疑問を投げかけると、
大抵の人が『よくも私たちを低能扱いしたものですねえ』
と苦笑する。
香港は今の中国にとっては『黄金の卵』みたいなものであり、
それをみすみす押し潰してしまうわけがないじゃないか
と反論するのである。
既に香港経済圏は広東省にまで広がっており、
広東省はいわば香港の工場地帯に成長してきている。
もし、香港を『幽霊の町』にしてしまったら、
困るのは香港の人たちだけでなくなっているのである。
第二に、将来を予想するのに、過去もしくは現状を基準にして
物事を判断してはいけないということである。
たとえば、3年後に香港の返還が控えているからと言って、
いまの北京(政府)の人事や政策だけで判断すると予想を誤る。
3年後にはトップも代わっているし、政策も大きく変わっている。
いまトップにいる人はおそらくほとんどいなくなっているだろうし、
いたとしても政策はもっと大きく変わってしまっているに違いない。
どちらに変わっているかと想像する場合、私のような楽天家は、
どうしても『世の中はよくなって行く』という方向に賭ける。
そういう判断をしたので、
香港の不動産に投資することを思い立った。
自分の住むマンションを一室買ったのがきっかけになって、
10室買い、それがたちまち100室に増えた。
自分が買っただけでなく、
親しくつきあっている友人たちにもすすめた。
遂にはツアーまで組んで香港詣でをするようになった。
こうして3年の間に650室も買った。
どうしてそんなことができたかと言うと
銀行のお金を借りて買っても、
元利の返済をきちんとやれるだけの家賃収入があったからである。
人から見たら冒険に見えるかもしれないが、決して冒険ではない」
(『旅は電卓と二人連れ』平成6年出版)
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