| 第179回香港でのマンションの購入が新しい見方を生みだしました
 私が平成3年の頃まで邱さんの“中国大陸の香港化”説に気づかなかったのは
 北九州市にある八幡製鐵所の
 遊休地の利用方法に没頭していたからです。
 当時、私は製鐵所の単身赴任者寮の宿舎に住んでいて、宿舎のテレビを通して、大勢の香港の人たちが
 飛行場から外国に飛びだしていく光景をしばしば目にしました。
 また「香港の街はやがて寂れてなくなってしまうのでは」と
 書いている新聞記事も見ました。
 そういった動きは、目の中に入っていましたが、
 視界が製鐵所の遊休地とその周辺に集中し、邱さんが
 “中国大陸の香港化”説を提起した“アジアで一旗”や
 “アジアの風”や“海の向こうが面白い”は
 すべて本棚の中で眠ったままでした。
 そんな私も、邱さんの“中国大陸の香港化”説を知るや、強い刺激を受け、夏休みを利用して香港を訪ねました。
 当時、邱さんの香港九龍地区の不動産会社の
 責任者をしておられた
  輝明さんに 尖東地区ないで投資物件を案内していただき、その際、
 「あそこに見えるのが邱先生のマンションですよ」
 と遠方に見える建物を指されたことを思い出します。
 邱さんの著作を読むと、そのマンションを買ったことが
 “中国大陸の香港化”説ににつながっていくことがわかります。
 ここからは、しばらく邱さんが平成4年に執筆した『電卓と二人連れ』(のちに『旅は電卓と二人連れ』と改題)
 を訪ねて、その頃の話をおききすることにしましょう。
 「マンションを買ったおかげで、香港の不動産の動きに気をつけるようになった。
 見ていると、香港の不意動産は東京や台北に比べてかなり安い。(略)
 そればかりではない。香港の不動産は値段の割には賃料が高く、
 利回りが10%をこえる。
 たとえば、私がかったマンションは200万香港ドルだったが、
 家具を入れて家具つきで貸すと
 月に2万香港ドルの家賃がとれる。
 ではどうして東京の不動産投資の利回りが2%から3%、台北の場合が4%から5%と言うのに、
 どうして香港だけがこんなに高いのだろうか。
 その原因はいくつるか考えられるが、
 一番大きいな原因は、なんと言っても
 1997年の中国返還を目前に控えて香港の人たちが
 浮き足立っていることである。(略)
 ところが、人の動きを見ていると、外へ移民する人が多い半面、
 外から香港に入って来る人も
 それに負けないくらい増えている。(略)
 つまり、家に投資する人は少ないが家を借りる需要は旺盛なので、
 不動産は値段に比べて家賃が高いのである。」
 (『電卓と二人連れ』。のち『旅は電卓と二人連れ』に改題)」
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