| 第166回転業するなら足元の明るいうちにがギリギリの限界
 ダメになった仕事とさよならをするタイミングについて『朝は夜よりも賢い』に書かれている文章の引用を続けます。
 「ただそうはいっても『風のそよぐ葦』のようにちょっとした風のたびに動揺しているわけにも行かないから、
 『どうも駄目らしいな』と思っても、すぐにはやめない。
 『石の上にも三年』というが、3年は頑張ってみる。
 3年頑張ってもいっこうに改善するキザシがない場合は、
 やめるきっかけを真剣になって考える。
 つまり、『石の上にも三年』とは3年頑張っても駄目な仕事は早くやめろ、
 という意味に私は解釈している。
 どうしてかというと、いまのように情勢変化の激しい時代には、
 一つの景気のサイクルが3年や4年にすぎず、
 そのサイクルに合わなかったら、
 それは計画ちがいだったと考えるのが正しいからです。
 人生は短いのに、
 間違ったことに何年も手こずっているようでは、
 あっという間に人生が終わってしまう心配もあるからである。
 もっとも、私がこんなことをいっても、私のように『見切り千両』の実行できる人は
 あまり多くないだろう。
 見切るということは、
 自分の腕を自分でぶった切るようなものであるから、
 誰だって躊躇する。
 躊躇するのが人間として当然の心理なのである。
 しかし、その結果、腕だけでよかったのが身体中に転移して、
 もはや手遅れということになってしまうことが多いのである。
 だから転業するなら足元の明るいうちがギリギリの限界である。
 それでも、まだ救いのあるのは、現実に腕や足をちょん切るのと違って、
 うしなったお金は、陣営の立て直しさえきけば、
 あとでまた完全に修理がきくことである。
 一時的に全財産を傾けるくらいのことは
 それほどたいしたことではないのである。」
 (『朝は夜よりも賢い』)
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