第163回
世の中には時流に乗る商売と消えていく商売があります
「世の中にはお金の儲かる商売と儲からない商売がある」
「世の中には時流の乗った商売と消えていく商売がある」
邱さんの作品の中でしばしば登場してくる言葉ですね。
邱さんが財務相談室を開設したのは、もう30数年も前のことです。
それまでは、邱さんも商売がうまくやっているか、いないかは
それに従事している人の才覚とか
努力によると考えていたそうです。
しかし色々な人にあって話をきくうちに、
商売人の器量とは関係なく、
どんな従事している業種によって、
金が儲かる商売と儲からない商売に
分かれることに気づいたと邱さんは色々な本に書いています。
私にメールをくださった方が読まれた『企業家誕生』
(のちに『四十歳では遅すぎる』に改題)で邱さんは
淘汰される運命にある商売として印刷屋、
他方生き延びていける商売として八百屋を仮定し、
この二つの商売の違いを具体的に書いています。
「戦後の経済成長の中では、
中小の印刷業者はなかなか生き残れないが、
八百屋はスーパーやデパートの隣に
店を構えても立派にやっていける。
その差はどこにあるかというと
(1)人手不足による人集めの苦しみと人件費の高騰に
印刷屋は耐えられないが、家族労働を中心とした
八百屋にはこの問題がない。
(2)印刷屋は合理化のために絶えず
新鋭機械に資金を投じなければならないが、
受注能力がふえると新しくマーケットを
開拓しなければならない。
そのためには無理な営業をすると、
採算のよい受注ができなくなるばかりでなく、
信用のない得意先から不渡りを
くらわされたりする危険性がふえる。
八百屋は現金商売か古くからのお客を相手の商売だから
金ぐりに困ることがないし、お金のとりっぱぐれもない。
(3)コストが上がったからといって、
印刷屋はおいそれと値上げはできない。
入札で値を決めるとなると、
安値受注を強いられることがしばしば起こる。
その点、八百屋は毎日の仕入れ値段は
毎日の仕入れ値段によって
自分らで売値を決めることができる。
(4)印刷屋と八百屋では粗利がまるで違う。
紙代も入れて、印刷屋が50%の粗利を稼ぐことは難しいが、
八百屋なら、売れ残りを半値で叩き売っても
まだ儲けがあったりする。
(5)中小印刷業者が大日本印刷や凸版印刷を向こうにまわして
競争することはできないが、
八百屋は三越やダイエーのすぐ隣に店を構えて、
大型店と競争することができる。」
(『企業家誕生』のちに『四十歳では遅すぎる』に改題)
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