第161回
自分の身についた能力をもつ人は幸福になります
今からもう15年も前になりますが
昭和63年に日下公人さんが
『新しい「幸福」への12章』という本を出版しました。
以下はこの本からの抜粋です。
「発明、発見、工夫、デザイン、作詞作曲、著作、建築、
パフォーマンス、タレント、指導、演出、イベント、企画、
事務代行、コンサルタント、エンターテイメント、
あるいは鑑定とか占いとか、ともかく何であれ、
自分の身についた能力をもっている人は幸福であり、
また豊かになる機会が多い。今はそういう時代である。
こういう人は帰属の安心は無い代わりに
独立の満足をもっているし、時間の自由もある。
自分で自分の能力を磨けば一発当て、
収入と名誉の両方を射るチャンスがいつも目の前にある。
そうした緊張感をもって生きれば人間もたるまない。
自然と個性も豊かになるので、
それを魅力と思ってくれる異性も現われる。
そこでますます張り切る・・・ということになるかどうか、
個人差の大きい分野のことだから、そこまでは保証できないが、
ともかく、たとえ会社のなかで生きるサラリーマンであっても、
何か自分の能力をもたなくては
社内で浮かばれない時代が到来している。
“指示待ち族”で、命令されれば人並みのことはいたします
という態度では、いまは会社のほうも迷惑する。
そういう人は、大体35才くらいまでは
日本的経営の仲間主義に包まれて幸福に暮らせるが、
それから先は使い捨てに近い状態がまっている。
そうした意味では、
会社に入るのは生涯を養ってもらうためでなく、
生涯使える自分の能力を開発させてもらう修行のためだと
考えたほうがよい。
アメリカにはキャリア・メーキング(経歴づくり)と
呼ばれる就職の仕方があるが、
日本にもそうした形が入ってくるので、
会社もそうした形の人材の流入と流出を
うまく利用できるよう対応の幅をひろげようとしている。
したがって、長年つとめたわが社のなかでなら
仕事はできるが他ではだめですというのでは、
昔は武士的忠義の証にもなったが、
これからは浮かばれない人生態度になる確率が高い。」
(『新しい「幸福」への12章』 日下公人著)
この文章を読んだころ「サラリーマンは35才くらいまでは
日本的経営の仲間主義に包まれて幸福に暮らせるが・・・」
というくだりと「何か自分の能力をもたなくては・・・」
というくだりが印象に残っていました。
そして15年ばかりたった今は「これは至言だったなあ」と、
一種感慨に似た気持ちが起こってきます。
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