| 第144回58歳の邱さんの第一の目標は『死ぬまで現役』
 昭和57年、58歳になった邱さんは『ダテに年をとらず』という本で、その後の人生目標を書きました。
 「生きている限り『現役』であることが第一であると思う。
 現役をおりるとすぐ老化する話は前にもふれたが、
 作家たちの創作活動を観察していると、
 現役を続けているつもりでも60歳を過ぎると
 やっぱり気力は衰える。
 それは他人事で、自分だけは例外だ
 と考える理由はどこにもないから、
 私もあと5年くらいしかもたないかもしれないから。
 でも世の中は権威に弱いし、
 一旦権威と認められたら、
 しばらくそのおつりで暮らせる。(略)
 第二にお金に困らないようにすることである。お金については35歳から55歳までの20年間に
 一生懸命理財に心がけたので、これから先、
 よほどの大失敗でもやらかさない限りは、
 不自由することはないだろう。
 第三に適当に色気があり、適当に冒険心を満たせることのできる生活がしたい。
 できれば妻に隠しておきたくなるようなヒミツも持ちたい。
 そうすれば、恐らく生き甲斐も感じるだろうし、
 おしゃれの精神も失わないですむだろう。
 第四に、自分より若い人たちを友達に持ちたい。いまの世の中は変化が激しくて5年も歳が違うと、
 違和感があるというが、私の場合はだいたい27歳から、
 誰とでも話が通ずる。
 お互いに人生観や趣味が違うことがあっても、
 全く違う星に住む生き物というほどのひらきは感じない。
 第五にしょっちゅう世界中を旅行してまわりたい。いまは忙しくて、一ヶ所に1ヶ月も滞在しているような
 余裕はないが、そのうちに雑誌社や講演依頼先から
 電話がかからなくなるだろう。
 そうしたら、エーゲ海のマジョルカ諸島にでも
 長期の滞在をするつもりである。
 世界中を歩き終わらないうちに、
 多分73歳にはなっているだろう」
 (「平均寿命で死ぬのが理想です」
 『ダテに年をとらず』《PHP研究所》に収録
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