| 第137回私の“邱永漢観”はそうズレていないと思っています
 私に“邱永漢語録”を書く機会を与えてくださり、また邱さんのエッセンス本を書く仲立ちをしてくださったのは
 「日本事業通信網」という情報を提供している
 石原勉さんという人です。
 石原さんは当時、邱さんを責任編集者として担いでいましたので
 私は石原さんに「邱さんは孔子とか孟子とかいわれている
 諸子百家の人たちと同列に並ぶ第一級の人間観察家ですよ。
 そう思っている人間はボク一人じゃないはずですよ」
 と話していました。
 私は取材を受けた「スポーツ・ニッポン」紙の若林さんにも
 そうした感想から「邱さんは東洋が生んだ思想家の一人」
 と話したのでした。
 そうした私の感想は邱さんの著書を読み続けているうちにできあがってきたもので、
 日本の知性の代表選手とも言うべき渡部昇一さんや
 谷沢永一さんといった人が
 邱さんについて書いた文章にふれることいで、
 より強固なものとなってきたものですが、
 つい最近邱さんご自身、
 「現代の諸子百家がつとまるためには」と題して、
 次のように書かれたことで、
 私が邱さんに抱いているイメージは
 そうズレていないと思っています。
 「私は世間から面白半分に『お金儲けの神様』に祭り上げられておりますが、
 自分では20世紀から21世紀にわたる春秋戦国時代を生きる
 諸子百家の一人だと自負しています。
 既成秩序が崩壊し、新しい秩序を目指して
 変化して行く過渡期を生きているわけですから、
 どういう生き方をすればよいか考えなければならない点では、
 2500年前と同じでしょう。
 ただ孔子の時代といまの時代とどこが違うかというと、2500年前は人間関係をどうするかが最重要のテーマでしたが、
 いまは経済がわからなければ、
 人間関係も確立できない時代になったということです。
 お金の話ばかりすると言うけれど、
 お金の扱い方からお金の儲け方まで
 ちゃんとした基礎知識を持っていないと
 いまの世の中をスマートに生きて行くことができません。
 お金の話をすると、お金にガツガツして生きているように思われがちですが、
 当今の思想家を勤めようと思ったら、
 お金の動きに無知というわけには行かないのです。
 孔子は『富貴在天』と言って、
 お金に対してはお手上げでしたけれど・・・。」
 (『もしもしQさんQさんよ』PHP研究所)
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