| 第133回これからも”お知恵”を拝借していくつもりです
 考えてみればこれまで私は邱さんのお知恵をたくさん拝借してきました。
 子供の進学にあわせ、家を建てたり、
 老後に備えた経済面の設計を立てる場面で
 手とり足とりしてコーチしていただきました。
 将来潰しがきかいない人間になってはいけないと思って40歳のときに経験のない分野に飛び込むとか
 50歳になるところで会社を辞めて
 後半の人生開拓に踏み込んだのも、
 邱さんが生きてこられた道程や
 後輩へのアドバイスに刺激を受けてのことでした。
 おまけに私はご本人の作品のエッセンス本を編集させていただく光栄に浴しました。
 そのことが、自分の本を出版することにつながり
 その際には親切極まりないご支援をいただいたのは
 先ほど来、書いてきた通りです。
 このような経緯から邱さんは私にとっては”知恵の宝庫”以上の存在ですが、邱さんは
 『朝は夜よりも賢い』という著書のなかで
 活路を探し求める経営者たちに向かって
 「知恵は借り物でも知恵である」と書いています。
 「いくら難しい世の中になったといっても、私たちの目の届く範囲内には、
 必ず指標になる人がいるものである。
 成功例もあれば、失敗例もある。
 また『あの人のようになりたい』といえば
 『あんな人になりたくない』という人もある。
 そのいずれも役に立つもので、失敗例はどうして失敗したのか、
 成功したのはどうして成功したのか、
 いずれも生きた研究対象といってよいだろう。
 もちろん、習うとすれば当然、成功した例に習うべきで、ふだんのつきあいだって、成功した人とつきあうに限る。
 ただし、なりふりかまわず、
 徹底的に真似しようとする熱意が必要であり、
 また人に何と言われようと、
 徹底的にやるだけの面の厚さも必要である。
 つまり『人を真似するのも知恵のうち』であって、
 子供の知恵のつきはじめは
 大人の真似であることからもわかるように、
 先覚者の真似をすることからはじめれば、
 やがて真似の域を脱することもできるようになるのである」
 (『朝は夜よりも賢い』)
 邱さんはいろんな場面で「自分を成功者だと思ったことはない」と書いています。
 当人の感想としてはそういうことなのでしょうが、
 後輩からみて、これほど活力に満ちた生活をし、
 そして実に有益な情報を提供してくださる先輩は
 他には見当たりません。
 私はこれからも現代における最大の知恵者、
 邱永漢さんの”お知恵”を
 ドンドン拝借させていただくつもりです。
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