| 第127回私心ない上司のメッセージが部下を行動にかりたてます
 私は本社の赤字部門で2年ばかり仕事をした後、43歳のとき八幡製鉄所の遊休地を活用して
 新規事業を担当することになりました。
 赴任当初、2年ほどすれば、何もできないで
 東京に戻ることになるのではないかと思っていましたが、
 あれこれやっているあいだに新しい事業が生まれ、
 また平成元年からはスペース・ワールドという
 テーマパークのPRを担当することになり、
 めぐりめぐってその2年後にはテーマパーク隣接地に
 ホテルを誘致する役目になり、
 身柄を新日鐵の本社に移すことになります。
 そのとき、私の上司になった先輩は、これが難題であることを承知しつつ、
 何とか打開したいと考えられたのでしょう、
 私に地方都市におけるホテル事業の実状を正確につかまえ、
 そのことをトップに報告しようと資料作成を指示しました。
 この指示があとから思えば、不可能に近いと思っていた問題に
 解決する糸口をつけてくれました。
 このときの上司からメールをいただきました。
 「君の誠実な態度がホテルを呼び寄せたのだ」と元上司はねぎらいの言葉をかけてくださり、
 「新しい分野での活躍を祈っている」
 と激励してくれました。
 この上司は課題解決の糸口をつけたあとで、会社を去りました。会社を去る日、会社の地下の出入り口から、わざわざ、
 私を呼び寄せ、「いいか、ホテルの誘致は是非実現させろよ」と
 言って、玄関口から姿を消して行きました。
 そのときの元上司の後姿を私は今も忘れることができません。
 この私心のない一言が部下である私を駆り立てたのです。
 こうして私はさまざまな場面で導いていってくださった諸先輩からありがたい言葉をいただき、
 身の引き締まる思いがしました。
 ただし、そういうことに喜んでばかりはいられません。
 私の本は商業ベースのものであり、
 本の売れ行きに出版社は期待をかけているのです。
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