第115回
『あなたも賢者になれる』と決まってドッキリ
本のタイトルがきまらなければ、本は出版されません。
幸い、出版社の人にたしかめると、
段取りが整い次第、邱先生にあらためて原稿を届け
ネーミングについてもご意見を伺いに行くとのことです。
そう聞いてよろこんでいましたら、
早々と出版社からその結果が我が家に届けられました。
そのとき私は琵琶湖湖畔のリゾートホテルで、
ある会社の青年たちを相手にして
「問題解決」研修のセンセイをつとめていました。
この研修が始まるとき、私は
「名前はまだ決まっていないけれど、
この10月には処女作品を発表しますよ」と話していました。
一日の勉強が終わり、
車座になって10数名の青年達とワイワイ語りあい、
24時近くまで雑談が続きました。
もう遅くなったので、この場はお開きにしましょう、
といって自分の部屋に戻りました。
すると、枕元に妻からの伝言ファクスが届いていました。
ファクスには二つのことが書かれていました。
一つは邱さんがタイトルとして
『あなたも賢者になれる』(私は邱永漢の知恵を借りた)
と決めてくださったこと。
もう一つは、邱さんが本の帯に飾る言葉でなく、
序文を書いてくださり、
帯に書く言葉はそのなかから選んでほしいと
いってくださったとのことで、
すでにその序文を出版社がいただいているということ、
この二つです。
本のタイトルが『あなたも賢者になれる』に決まったと知って、
一瞬ドキッとしました。
私にとって賢者とは邱さんその人とか唐津一さんとか
日下公人さんとか渡部昇一さんといった当代第一級の論者です。
そういう人にあこがれているので、私は
「賢者とつきあえばあなたも幸せになる」
「選ぶならやっぱり超一流の賢者」
「知恵を借りたらあなたも賢者」とか
「賢者」という言葉が入ったタイトルをいくつか考えました。
それほどまでに「賢者」という言葉にこだわったのは、
自分が「賢者」でないことを示している証拠です。
そういう人間が書いた本のタイトルが
「あなたも賢者になれる」というのでは、
口幅ったいものを感じないわけにいきません。
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