| 第113回本のネーミングが売れ行きを左右します
 自分の本の出版に際して、邱さんが激励の言葉を添えてくださるというので、
 お礼に伺ったとき、出版社と私のあいだでは、
 本のタイトルをどうするかで意見が食い違っていました。
 私は“定年の壁”をくぐりぬけるために実践してきたことを書いてきたという意識がありましたので
 「定年の壁を破る法」とか「定年のハードルを乗り越える法」
 といったタイトルがいいのではないかと提案していました。
 ところが出版社の方は「定年」という言葉には
 暗いイメージが漂い、本の売れ行きにかげりがさすと
 難色を示されました。
 邱さんにそのことを話すと「昔、ボクが『社長学入門』という本を出すときも、
 出版社が反対したけど、ネーミングが決まるまでに
 やりとりがあったんですよ」と、
 本のタイトルが決まるまでのいきさつを話してくれました。
 この作品は「経営者の交際術」というタイトルで連載し、
 昭和49年の1月に出版されましたが出版に際して、
 出版社の人は『社長学入門』というタイトルにすると、
 社長は一つの会社に一人しかおらず、
 本を読んでくれる人が限られるじゃないかと心配しました。
 それに対して邱さんは、「心配することはないよ、社長は少ないかもしれないけど、
 社長になりたいと思っている人は多い。
 社長になりたいと思っている人と、社長候補が読んでくれれば
 かなりの部数が期待できるはずですよ」と応酬したとのことです。
 その結果、『社長学入門』は三十三版を重ねたという話で、
 出版する本を多くの人に読んでもらうようにとの
 著者自身の工夫が実を結んだということです。
 この話を聞いて、私は「本を書きましたので、タイトルの方は適当にお願いします」と、
 出版社まかせにしてはいけないのだということに気づきました。
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