| 第106回自分が考え、行動した実地体験を書こう
 今、本屋に行くと「定年」のことについて書いた本がたくさん並んでいます。
 並んでいる本を開くと、「厚生年金の受給方法」とか
 「国民年金への加入方法」とか「雇用保険の受給方法」とか
 事務的な手続きが中心にしている本が目につきます。
 また定年を迎えた後に、人はどんなことをやっているのかという
 体験記を集めた本などがありますが、
 いろんな人の体験の寄せ集めの感がして、
 実際に自分のお金を払って買おうかという
 気になる本にであうことはあまりありません。
 いま、サラリーマンが知りたいと思っていることは、どうしたら「定年」年齢の60歳以降も
 仕事を続けていけるかということでしょう。
 そのことに触れる本がないのですね。
 であるなら、そのことを自分が書けばいいのではないか、
 私は出版の催促を受けるなかでそう考えるようになりました。
 そこで、私は数日後、本の執筆を促されている出版社に電話をし、「自分が勝手にテーマを選んで文章を書きます。
 書いた上で出版に値する作品かどうか評価していただきたい」
 と答えました。
 それから、土、日はパソコンに向かって自分の本をつくるための
 執筆活動がはじまりました。
 余談になりますが、私は52歳まではパソコンにノータッチでした。
 そうした私を見て、コンピュータに詳しい友人が
 「パソコンを習得したほうがいいぞ。
 正月休みなどにホテルでパソコン教室をやっているじゃない。
 そういうところに通うのも一つの手じゃないか」と
 私を急かせました。
 また家の中でも妻や娘が
 「これからパソコンが操作できないようでは
 一人前の仕事ができない!」と私を脅かしました。
 私の同僚に、自分もパソコンを習得しなければと考えていた人がいて、
 彼がある日、「パソコン教室に通う申し込みをしました。
 戸田さんの分も申し込んでおきましたから」と言われ、
 私は半ば強制されて、パソコン・スクールに通うことになりました。
 さて、パソコンの操作に習熟する道は自分でパソコンを買って、自分ですぐ書けること、
 書きたいことを自由に書いてみることでしょう。
 私はすぐにパソコンを買い、キーボードを叩きながら
 自分がやってきたことを書き散らしました。
 そして自分がいかに邱さんから学ぶことが多かったか
 いまさらながら気づき、その一連の記録に
 「邱永漢センセイ、ありがとう!」という名前をつけていました。
 その原稿をきちんとした文章にすれば
 本ができるのではないかと考え、
 土、日に本になりうる原稿をパソコンで書きはじめたのです。
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