第95回
私の“邱永漢研究”が始まりました
邱さんのエッセンス本はかなり出版されています。
私はずいぶん前に出版された『メシの食える経済学』と
『先の見えない者は滅びる』
という本以外は読んでいませんでしたが、
これ以外にも結構多くのエッセンス本が出版されています。
そういう邱さんのエッセンス本の編集は
ジャーナリストの世界に生きている人によって
行われているのでしょうが、
たとえ編集という仕事はシロウトであっても
本を読んで知ったことを役立てたという体験をもつ人間が
作品をピック・アップすれば
独自のエッセンス本ができるのではないかと考え、
私はエッセンス本の版元を訪問しました。
しかし私の売込みが弱かったようで
「あなたのような立場の人が邱永漢さんについて書くなら
『邱永漢の人物論』といったものではないですか」
といわれ、自分の希望を叶えることはできませんでした。
しかし、一回転んだからといって、嘆く必要はありません。
むしろ、「あなたのような立場の人が書くとしたら
『邱永漢の人物論』ではないですか」
と投げかけられたことは、
私にとっては新しいヒントです。
このことがきっかけになって、
私の「邱永漢研究」がはじまりました。
邱さんの世界を探求しようという活動がはじまりました。
といって大げさなことではありません。
人から「邱永漢さんて、どういう人なんですか」
と聞かれたとき
「これこれ、こういう人ですよ」
と答えられるようにすることです。
それがいかに刺激的なことであるかは、
糸井重里さんと邱さんの対談集
「お金をちゃんと考えることから逃げまわっていたぼくらへ」
という本が語っています。
この本は対談集というより、糸井重里さんによる
邱さんへのインタビュー集といったほうがいい本ですが、
糸井さんが興味津々で邱さんに迫っています。
邱さんという人はそれだけ探究心をそそる人物なのです。
私の場合は出版社に訪問をしたことがきっかけになって、
「邱永漢研究」が始まりました。
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