第73回
株を買えば時代の動きに敏感になります
株を買うときに要求されるのことの一つは先を読む力でしょう。
私は新規事業を企画したころ、邱さんの本を読み
「老齢化・成熟化・国際化」が現代日本の潮流であると
教えてもらい、それが参考になりました。
私はこのうち「老齢化」の流れに着目し、
お年寄り向けのサービス提供会社をつくったり、
終身介護制のマンション事業を企画しましたが、
そのときに読んだ本は『邱永漢の株入門』(昭和57年)
という株の本でした。
このことは株を買う場合は、
新規の事業を企画するときと同じように
「この先、世の中がどうなるのか」、
「どういう商売が受け入れられ流行するか」と
先を読む判断が要求されることを示しています。
この際の要領を邱さんは
「波の高低を見るな、潮の流れに乗れ」(『株が本命』)とか
「トレンドを読んで株を買え」(『シルバーグレーの金銭学』)と
表現しています。
頭で考えるとたいへん難しいことのように思えますが、
邱さんは最近文庫本が出版された『株の原則』で
「女性の場合だったらふだん自分が使っているものに、
注目してみるのも、一つの方法です。
洗濯機でも台所用品でもなんでもいい。
広告なんか見て、使ってみたら案外よかったとか、
そんなときは、わりあい、いいと考えられます」
と書いています。
こうしたソフトムードの邱さんのアドバイスに教えられ、
株を選ぶ場合、意識的に自分なりにストーリーを考えて
買う訓練をしたことがあります。
今から7、8年前のことですが、
パソコンとか車のナビゲーターの普及を見て、
液晶事業が伸びるのではないかと考え
液晶ナンバーワンのシャープの株を買いました。
また中国の大連でマブチモーターの最新鋭工場を見て、
アジアの時代に先頭を走る会社だと思い、
マブチモーターの株を買いました。
シャープもマブチモーターも値を上げました。
また若い人たちが検索サイトのヤフーを呼び出して
いろんな情報を探している風景を見て、
このヤフーの株を買ったら報いられるだろうねと
友人に語ったことがあります。
口で言っただけのことですが、
この株が値を上げたのはご承知の通りです。
こうしたまるでクイズゲームを楽しむような要領で
先読みを楽しむことができることを知りました。
自分の推理が的を射ていたのか、
あるいは見当外れだったのかは
その後の株の動きが教えてくれます。
予想が当たれば自分の推理も捨てたものではないぞと、
自信をもつことになり、外れた場合には
自分の考えを修正していく必要に迫られます。
こうした推理と逐次の点検で自分の
時代の流れに対する感度を高めることができます。
人が株を買う目的はもちろん儲けることにありますが、
時代の流れに敏感になる効用があることに気づきました。
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