第70回
やっぱり一番悪いときが一番のチャンスです
私たちは株がブームに乗れば、
そのブームに乗り遅れるなとばかり株を買います。
また株が下がったらそっぽを向きます。
これが私たちの自然な感情です。
しかし、それでは株で儲けられない。
株で儲けようとしたら、人間の自然な気持ちと反対のことを
していく必要がある。
つまり、株がブームに乗っている時には買いたい気持を抑え、
逆に株の相場が下がって、証券会社に閑古鳥が鳴いている時こそ
株を買うチャンスなのだ。
と考えると、株とのつきあい方が全く変わってきます。
そう考えて株価が下がりに下がっていた相場欄を眺めていた
平成4年、邱さんが雑誌「SAPIO」誌に
「サラリーマン諸君、ボーナスは少ないかもしれないが、
株の方もうんと安い」と書きました。
私は「これだ、これ。今こそ株を買う絶好のチャンス」と
膝をたたき、証券会社の店頭に行きました。
証券会社の店頭にはお客がおらず、開店休業のような状態でした。
頭では理解していても、実際にこういう時期に
お金を出して株を買うのは勇気が必要です。
「今がチャンスなんだ」と自分に何度も言い聞かせました。
そして400円近くまで下がっていた富士通株を買いました。
NEC株でもよかったのですが、
気分転換のため富士通株にしました。
そうするどうでしょう、相場の安くなったときの株は
しばらくすると上昇に転じ、
あれあれという間に倍の800円になりました。
私はそこで富士通株を売りました。
邱さんが株のことについて書いた本を読むと
「株の儲けは辛抱料だ」という言葉に出会います。
株で儲けるには株が買い値より高くなった時に株を売らず、
ずっとガマンの子を決めて売りたい気持ちを抑えることが
大事なのだというのです。
この観点から言えば、確かに富士通株はその後2000円、
更には3000円となり、またしばらくして5000円にまで
なりましたから、早く売りすぎた、「辛抱」が足りなかったと
いうことになります。
そういう反省は起こりますが、ともかくも仕入れた新知識は
実際にためしてみることだと知りました。
私はこういう体験をしましたので、のちに邱さんが
『一番悪いときが一番のチャンス』(平成10年)という
本を出したとき、このタイトルの意味することを
多少は理解できていると思いました。
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