| 第57回邱さん曰く「マスコミとのつきあいでは低姿勢にこしたことはない」
 最近はテーマパーク受難の記事が目立ちますが、平成の時代になった頃から全国各地にテーマパークが誕生し、
 私はそうした頃に生まれたあるパークのPR担当になりました。
 PR担当になって一番最初にやったのは売り込みのシナリオをつくることでした。
 急ごしらえでしたから、どんなパークができるのか、
 PR担当にもわからないところがあり、
 突貫工事中のパビリオンの中に入って、
 どんな風な出来上がりになるのか想像しつつ、
 売り込みのイメージをつくっていきました。
 つくったイメージにもとづいて新聞やテレビの記者たちにパークをPRし、記事として取り上げてもらうように
 働きかけていくのが次の仕事です。
 パークのPRのお相手は社会部の記者の人たちが
 つとめてくれることになりました。
 それまで付き合いのあった記者さんは経済部の人で、
 こちらの話にワリに素直に耳を傾けてくれたものですから、
 私は同じような要領でつきあえばいいと思い、
 初対面の記者クラブの代表の記者さんに
 このパークは地域活性化という狙いも持って
 開設されていることを念頭に入れて取り扱ってほしいと
 思っていたをそのままま話しました。
 ところが、この私の言葉と態度が記者さんのカンにさわったようです。まだ会ったこともない記者たちのあいだで
 「高圧的な広報担当だ」という噂が巻き起こり
 回りまわって、私は上司から
 「戸田君、しばらく記者クラブへの出入りを控えるように」
 と言われることになりました。
 PR担当の人間が記者との接触を断られたわけですから、
 失業したのと同じです。
 邱さんは『社長学入門』という本で、雑誌社から攻撃を受けることになったある会社へのアドバイスを例にして
 マスコミとの付き合い方の要諦を書いています。
 「あんまり怒るな、自動車にぶつけられて怪我をしたと思ったらよい、
 と私は言った。自動車事故の場合も、相手が悪ければ、
 相手に抗議を申し入れる必要はある。
 しかし怪我をしても即死よりもいくらかましだし、
 怪我なら早く治療するに限る。(中略)
 書かれた当人だけがいつまでも忘れかねて恨みに思ったりするが
 悪夢を見たと考えれば何でもないことなのである。(中略)
 マスコミとのつきあいでは低姿勢にこしたことはない。」
 ハショリの多い引用になりましたが、自分が体験したことを通して考えても、マスコミとの付合いは邱さんのアドバイスに尽きますね。
 暫く我慢していると、険しかった記者さんたちとの関係も
 和やかで打ち解けた関係のものに生まれ変わりました。
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