第56回
時代の求めが変わるなかで、土地の主役が変わっていきます
「土地の主役は変わる」というのは
高島陽さんの『社長のメシの種』で出会った言葉です。
この本には古い施設が取り壊されて、そのあとに
新しい施設が建てられ、ニュービジネスが誕生していることが
紹介されています。
その現象を高島さんは「主役は変わる」と表現し、いろんな事例を
紹介してくれました。
私はこの本に紹介されている施設を見て回りましたが、
最初に訪れたのは倉敷の「アイビー・スクエア」は
倉敷紡績の跡地にできたものでした。
続いて兵庫県の伊丹にできた「つかしん」は
グンゼの靴下工場の跡地でした。
そのあと訪れた大阪の高層マンションや
愛知のスーパーマーケットも前身は紡績工場でした。
かって日本の産業の中心であった紡績工場がいま
スーパーとか百貨店とかマンションとかホテルとかに
生まれ変わっているんだということがわかりました。
のちに訪れた横浜みなとみらい21の建設地は
横浜の三菱重工の造船所の跡地で、
造船所が横浜の新しいショッピング・モールに
変貌しようとしているところでした。
鉄や造船をつくっていた土地が余って、
その活用策が求められる時代になったんだなあと思ったことです。
そして私が勤務していた八幡製鐵所の工場跡地にテーマパークが
誕生することになりました。
このパークは宇宙をテーマにしたパークです。
もともとはアメリカの子供たちが宇宙飛行士の訓練を
模擬体験できるるように工夫した施設のライセンスを
新日鐵が獲得したことに始まります。
ただ調べるうちに、これだけでは事業らしい事業に
ならないことがわかり、自前でパークをつくる必要に迫られました。
新日鐵の本社内にパーク企画のプロジェクト・チームがつくられ、
さまざまな分野の専門家たちの知恵を借りて
パークを設計する作業が始まりました。
私はそうした動きを傍らから見て、面白いことになったなあと
思っていましたが、お前も手伝えということになり、
私はパークを運営の会社に出向し、PR担当の部長になりました。
マスコミの人たちは
「頭の硬い鉄屋がアミューズメント事業に乗り出した」と
冷やかしたのですが、私はこうした体験を通して
「土地の主役が大きく変わっていく」ことを
実感することになりました。
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