Qさんは、かつて「知恵は借り物でも知恵である」と書きました
そういうことをおっしゃる人の知恵ならいくら借りてもモンクは出ませんね

第51回
新規事業の企画に賛同してくれる人は
ごく少数と覚悟するのがいいですね

今、バブルの崩壊現象から抜け出せないことが悩みに
なっていますが、私がお年寄り向けのマンション事業を
企画しているときは、今から思えば
バブル現象の前兆期に当たっていました。

私のもとには地元の銀行の人たちと大手生命保険会社の支店の
人たちが毎日のよう訪ねてきていました。
もともと地元の銀行の人達とは、
私が「こういう事業はどうですか」と打診したことから、
交流がはじまりました。
地元の銀行の人は出資という形であれ、貸出しという形であれ、
新日鉄と関わりを持てるいいチャンスだと思っていたようです。
一方、生命保険会社の方は東京の企画スタッフが
私が企画している話を本社経由で聞きつけ、
支店の人達を連れてやってきて互いの交流が起こりました。
是非ともこの話に一枚かみたいという姿勢でした。
という具合で私にはパートナー探しの苦労は何もありませんでした。
しかし、うまく行かなかったときに責任を負うのはこちらです。
ですからパートナーに恵まれているといって
気が休まることは一つもありませんでした。

ところで当の私は、自分が立てたプランを前に進めるか、
それとも引っ込めるのかに大いに迷っていました。
「この事業はここでは受け入れれないんじゃないの」、
「立派な施設ができても人が入らないと悲惨なことになるよ」
「危険だから止めておいた方がいいと思うよ」といった
声に取り囲まれ、私は孤立した状態にありました。

そんな中、この事業が地元の人達にどう受け止められるのか
周囲の家庭に聞きに回ってくれた作業長さんが
「今、戸田さんたちが考えている事業は
世の中の人から感謝される仕事だと思いますよ」と
言ってくれました。
家庭訪問をしてくれたのは現場の作業長さんと工長さんの二人です。
私の同僚の渋谷さんが、この二人の労をねぎらおうと
自宅にこの二人を招き慰労してくださった席でのことです。
渋谷さんの奥さんのもてなしで楽しい会話がが続き、
これでお開きにするかといった頃に作業長さんが
「自分は光製鐵所に出張して、半導体製作の設備を据付けてきたところ
ですけど、この仕事と比べると戸田さんたちがこれからやろうとして
いることはずっと世間の人から喜ばれる仕事だと思いますよ」と
激励してくれたのです。

私は、孤立無援に近い状態にありましたから、
この一言は即効薬のように効いてきました。
「本当にそう思われます?」
「そう思いますよ」
「そしたら施設ができたら手伝ってくれますか?」
「いやあ。そこまでは踏み込めませんけど」

そんなやり取りのなかでこの作業長さんは
心底、思っていることを伝えてくれていると感じました。
帰りのタクシーの中で、私の気持ちはもう固まっていました。
「よし、計画を実行しよう。ただ失敗する可能性はある。
その時は、『このプランを立てたのは私です』と手を挙げよう。
少なくとも、コソコソ逃げ出すようなことはしないようにしよう」と
自分に言い聞かせていました。


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2002年10月17日(木)

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