第48回
事業プランには独自性がなければなりません
これから事業をやろうという場合、
そのプランの中に独自性を主張できるだけのものが
盛り込まれているかどうかを確かめる必要があります。
私は八幡に着任した年の暮にアチコチの施設を見て回ったと書きました。
土日を含めての施設見学で、神戸に住んでいる姉夫婦も手伝ってくれ、
義兄が運転する車に私と姉が乗って
大阪と京都のお年寄り向けの生活施設を見て回りました。
最初に大阪の守口の駅前にある「悠々の里」のマンションを訪ねました。
この施設に入って、食堂を見学し、窓越しに外を見ると
駅のホームで電車を待っている人までが見えて、
賑わいのある空間に建っている施設であることがわかりました。
次に京都の桂にできたばかりの有料老人ホーム、
ライフ・イン京都を見学しました。
この施設は山の斜面に建設された大規模な施設です。
案内役の人について施設内を早足で駆け抜けましたが、
壁などに書かれた絵があまり見慣れていない色調のもので、
見終わって下りてきたら霊安室が目の前に見えたりして、
一連の見学を終えると姉が、
「私はこういうところには絶対に入りたくないわ」と
拒否反応を示したのが思い出されます。
ただ、施設内にはマージャンに興じている入居者の人たちの姿も見え、
決して賑やかな場所ではありませんでしたが
それでも私鉄の駅から歩いて数分のところにあり
周囲の人に受け入れられそうな気配でした。
高島陽さんの『社長のメシの種』には東京で開業されている
お年より向けの施設が詳しく紹介されていますが、
大阪や京都でも同種の施設ができていることを
自分の目で確かめることができました。
さて、一連の見学を終えて八幡製鐵所に戻ると
自分が仕事をしている福岡県ではどうなっているのか気になりました。
同僚の渋谷貞夫さんから、福岡市の姪浜(めいのはま)というところに
老人向けのマンションがあると聞き、私はすぐ見に行きました。
実際にそのマンションを見て、
こういうところに住み続けたら淋しい気持ちになるのではないかと
と思いました。
またこのマンションは財産権が継承されるタイプのマンションと
聞いていましたが、やっぱり年寄り向けの施設はその考え方を
設計や運営のすべてに貫くことが大事ではないかと思いました。
福岡県にはこのほか山の上にもお年寄り向けの施設もあると
聞きました。
しかし、もうそういう施設は見に行く必要もないと思いました。
賑わいの感じられる場所に立地するお年寄りの施設は
福岡県にはまだない、そう結論づけ
自分が北九州市の社宅跡地で考えているプランには
それなりの独自性を主張できるものが織り込まれているとの
感触を深めました。
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