第47回
顧客をイメージづくりでも邱さんの作品にお世話になりました
どんな事業もそれを受け入れてくれる人がいなければ成り立ちません。
私は顧客を想定するに際し、
邱さんの本から仕入れた知識をもとに顧客を想定しました。
邱さんが税金のことについて書いた本に
「事業家・資産家のための節税の話」
という作品があることは前に書きました。
この作品を読むと、この世の中には
「どうしたら税務署に見つけられずに儲けたお金を脱税できるか」と
頭を悩ましている人たちがいることがわかります。
私はこの本を読んで得た知識から
自分が計画している事業のお客として勝手に
「金持ちのお年寄り」を想定しました。
自分の周辺にはそういう人は誰もいませんでしたが、
こういう人がこの街の周辺にもいるのではないだろうかと
想像を膨らませたのです。
そういう人ならマンションの入居に必要なお金を出すほか、
毎日の生活や健康管理とか身の回りのことに対する
サービスにもお金を払ってくれるのではないか、と思ったのです。
私が「お年寄り向けのマンション事業をやってみたいと思う」と
製鐵所の幹部に提案すると、直ちに
「そのマンションには会社のOBもはいることができるか?」
と聞いてきました。
私は自分が企画しているマンションは、
サラリーマン向きのものではなく、
一般のOBが入居するのは難しい思うと返事しました。
会社の先輩にも親からもらった財産があって
退職後ゆとりのある生活を送っている人がいるかもしれないけど、
一般に会社のOBは退職金と年金だけが頼りだろうから、
ふところに余裕がないのは現役時代と同じで、
そういう人間をターゲットにしたのでは
私が考えているビジネスは成り立たないと思ったのです。
さて、お年寄り向けのマンションには二つのタイプがあります。
一つは「終身介護制のマンション」といわれるもので、
入居者が死んだら財産権を放棄する、
その代わり、生きている以上はずっとサービスを受けられる
というマンションです。
もう一つは入居者が死んだら財産権は相続を受けた家族が継承する
というもので、ネーミングだけは「お年寄り向け」となっているけど、
実態は普通のマンションとなんら変わらない普通のマンションです。
「お年寄り向けのマンション」として世に打ち出すには
やっぱり前者の「終身介護」の契約方式を選ぶほかないと考えました。
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