| 第45回「年をとったらデパートの隣に住もう」の一節が浮かんできました
 人間、失敗した時点ではただただ精神的に苦しいばかりですが、邱さんは「失敗することをあまり恐れるな」と言います。
 「失敗するとよく覚える」という言葉もよく使います。
 邱さんは自分の失敗体験を題材にして
 「金儲けの神様が失敗した話―失敗の中にノウハウあり」(グラフ社)
 という本を書いています。
 この中で邱さんは
 「失敗をおそれる人は、
 失敗をおそれるあまり賭けを断念してしまうから、
 失敗もしない代わりに成功のチャンスも失う」
 「成功とは失敗を栄養として大きく伸びる樹木のようなものだ」
 と書いています。
 さて、私が失敗した理由の一つは、社内ですぐ賛同が得られるだろうという方に目を向け、
 肝心のお客さんの方に目を向けていなかったことです。
 失敗をして、新しい事業を起こすには、
 お客さんに喜んでもらえるプラン作りが大切という、
 このごくごく当たり前の事実に気がつくようになりました。
 そして、先送りにしていた会社の病院前の社宅跡地にお年寄り向けのマンションづくりの構想の具体化に
 取りかかってみようかなという気持ちが起こってきました。
 このプランには最初に企画した事業プランとは比較にならない魅力が
 備っていると思えてきたからです。
 面白いことに、「やってみるか」という気が起こってきた途端に、昔読んだ邱さんの「年をとったらデパートの隣に住もう」
 (「家を建てる話」。『金とヒマの研究』に収録。昭和59年)と
 いう文章が頭に浮かんできました。
 邱さんが渋谷の西武百貨店の隣にできたマンションを
 買った体験にもとづいて書いた短い文章です。
 短い文章ですが、私は「年をとったら賑やかに住みたいものだというのは、
 誰の心の奥底にも潜んでいる共通の願望ではないだろうか」と
 思いました。
 思っただけなく、邱さんはどんなマンションを買ったのだろうかと
 妻と一緒に見に行きました。
 その時の記憶も甦ってきました。
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