| 第44回邱さん曰く「取締役会で全員賛成するような新規事業はやるな」
 邱さんが昭和47年に刊行した作品に、『成功の法則』(三笠書房)という著作があります。
 邱さんが事業経営について経験したり観察したさまざまな事実から、
 事業経営たちが念頭に置いておいたらいいと考えた原則を抽出し、
 それらをわかりやすい言葉で書いた本です。
 この本には「常識に従うな。―取締役会で全員賛成するような新規事業はやるな―」
 という言葉が出てきます。
 この原則についての邱さんのコメントを読みましょう。
 「常識とは過去の体験によって積み上げられたものであり、
 過去および現在、私たちの周辺に起こっている事柄から
 教わったことを基準にした物の考え方であります。
 そうした常識の持ち主たちは、
 新しいアイデアが提起された場合、
 自分らの持ち合わせている常識をもとに是非を判断します。
 したがって取締役の大部分が賛成することは、
 大部分の人にとって常識化していることであり、
 全員が賛成することは知らない人がいないということである。」
 (『成功の法則』)
 「この意味で、新規の事業を始める時は、もし取締役会にはかった場合、全員賛成するようなことが起こったら、
 見合わせた方がよろしいと思います。
 ほんの数人しか賛成しない場合は、
 少し時期が早いということですから、苦労を覚悟する必要があります。
 たとえば4対6の少数意見になったときが、
 おそらく一番やりがいのあるタイミングです。
 ただし、そうは言っても、事業そのものが
 未来の社会的なニーズにマッチしたものであることが
 前提になることは言うまでもありませんが。…………」
 (同上)
 私はのちにこの文章を再読して、私が周囲の合意が得られることを重視して
 立てた事業プランが失敗に終わったのは、
 当然のことであったと納得しました。
 そして今回改めてこの文章を読みましたが
 この文章には、事業企画に失敗したあとで
 わが身に起こる事が予見されていると感じられるところがあり、
 引用していてちょっと身震してしまいました。
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