| 第30回手近なお手本をマネすることで再建できることを実感しました
 私の上司が赤字の事業を儲けの出る事業に切り替えた源泉は手近なところでお手本を探し、それをマネをすることでした。
 利益を抱いている同業の会社があるんだから、
 その会社がどういう仕事の仕方をしているか研究し、
 こちらの方式を切り替えようじゃないかというものでした。
 他人のマネをするというのは
 いかにも知恵のないやり方のように聞こえます。
 しかし、優れたお手本をみつけ、
 それに学ぶということは、ある意味では「自己を変革する」ことであり、
 変革を厭う人間にとっては、
 苦痛を感じられるものであることは先に書いた通りです。
 ずっと時間がたってから知ったことですが、いま多方面で活躍されている元アサヒビール社長の樋口廣太郎さんが
 慢性赤字状態にあった同社の社長に就任した早々、
 ライバル会社のキリンビールやサッポロビールの経営者たちを訪れ
 「うちの会社の悪いところは何ですか?」、
 「ビール事業成功の秘訣はなんですか?」
 と質問されたようですね。
 そこで得た答えをそのまま実行したことが
 企業再建に直結したように見受けられます。
 私はこの話を知ったとき、樋口さんの再建した手法は、
 スケールは違うかもしれないけど、
 私の上司が実行したのと同じものだと思いました。
 ついでにいえば、邱さんがこの辺のところをどう書いているのかと思って、『邱永漢の商売入門』(昭和59年)という本を手に取ってみると、
 「成功している同業者のやりかたを徹底的にマネするのはプラスになるか」
 という質問に対し、
 「いくらむずかしい世の中になったといっても、目の届く範囲内に、
 かならず手本になる相手がいるはずですから、
 一生懸命探してみるといいでしょう」
 と答えているのを知りました。
 邱さんはその例として東急グループの創業者、
 五島慶太さんを例に引いて説明しています。
 そういえば、五島慶太さんが阪急グループの各事業を創設した
 小林一三さんがやったことを徹底的にマネした話はよく聞きますね。
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