| 第26回一つの仕事を続けているとマンネリズムに陥ってしまいます
 私には大学時代から親しくしている友人がいます。大学に入ったのときにクラスが一緒で、
 ともに郷里が東京から西側にあるので
 一年生の夏休みに、互いの家を訪ね、以来親しくなりました。
 その友人と久しぶりに顔を合わせ、
 名刺を交換すると、友人は
 「君の名刺を見るといつも同じ部署の名前が入っているね」
 と私を冷やしました。
 彼は昔からチラッと辛らつなことをいう癖があり、
 それがまた魅力のひとつでもありましたが、
 私は痛いとこを突かれたなあと思いました。
 いまにして思えば、私の心の中で起こった変調は
 この友人が指摘したことに関係があったのです。
 ふりかえれば、私は大阪の堺市にある製鉄所から北九州市の八幡製鉄所に転出して以来、
 本社勤務、君津製鉄所勤務を含め労務部門での仕事が
 7、8年も続いていました。
 3度目の製鉄所勤務で課長になり、多少スパンが広がったとはいえ、勝手知った土俵の上で相撲をとっているところがあります。
 広がった分野の仕事にもすぐ慣れ、それとともに
 新鮮な気持ちが持てなくなっていたのです。
 世の中にはいろいろな仕事があり、また環境もドンドン変化しているのに
 一つの仕事ばかりで、変化がないと
 思うようになっていたのですね。
 といいながら、私はこういう仕事がしたいという希望や期待を自分の中につくりだしていませんでした。
 なんとかマンネリ気分から脱したいと思い
 私は邱永漢さんの『サラリーマン出門』(昭和45年)という本を
 手にしました。
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