| 第20回 邱さんへの集票活動に精を出しました
 
 邱さんの作品にはじめて接し、短い時間の間に随分いろんなことに手を出したものです。
 自分の家を建てるための土地を買い、
 そのあと都心部のマンションを買いました。
 また飲食店向きのマンションのオーナーになり、
 また少しばかりですが金を買いました。
 これらはすべて同じ年のうちに起こったことですから
 その前と比べたらずいぶん大きな変化です。
 眠っていた欲望が急に眼を覚ましたのかもしれません。
 さて、その翌年、私は千葉県の君津製鉄所の労務部門の課長となり、木更津に転居しました。
 その1ヶ月あとの3月のことです。
 邱さんが「日本人に戻りました」という手記を
 日経新聞の朝刊に発表しました。
 間もなくして、
 邱さんが参議院全国区の選挙に出馬することが報じられ、
 6月には邱さんの選挙公約が新聞に発表されました。
 「私は20年後のことを考えて行動します」、
 「本心をいわない政治家が多いけど、私は本当のことをいいます」
 と宣言しました。
 その文章を読み「その通りですね」
 と私は心の中でつぶやきました。
 ただつぶやくだけでは申し訳ないと思い、
 私は私と妻の双方の親戚縁者に電話をし、
 参議院の選挙では、投票場所に行って、
 「邱永漢」と書いてほしいと頼みました。
 結果として邱さんへの投票は15万票で61位にとどまり、落選しました。
 しかし、面識のない読者に
 そこまでの行動をとらせる邱永漢という人は
 「人を動かす」力があるというほかありません。
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