第4回
妻からの宿題にどう答えるかも頭痛のタネでした。
かなり先の話とは言え、定年の存在を考えると、
このカベをどう乗り越えるかが気になってきました。
もう一つ私が頭を痛めていたのは、妻からの宿題です。
ある日、妻が私に
「私たちもそろそろ自分たちの家を持つことを考える年齢に
きているんじゃありませんか」
と言い出しました。
私は東京に来るまで、経済的にはゆったりしていて、
金を貯めることに熱心ではありませんでした。
北九州市にある八幡製鉄所に勤めていた頃、
構外に富士銀行(現、みずほ銀行)が支店を構えていました。
そこの支店長さんが私の住んでいる社宅まで来られました。
私への口座開設の勧誘のためでした。
しかし、私は
「しっかり働いていれば、家の一軒くらいおのずと建つんじゃないの」
という構えで、支店長さんの勧誘には応じませんでした。
傍でその成り行きを聞いていた妻は
「この人、本当に大学で経済学の勉強をしたのだろうか」
と首をかしげたそうです。
という具合で私は貯蓄の必要性を認識していませんでした。
ところが、東京で住むようになり、生活環境がすっかり変わりました。
妻が私に
「自分の住居を持つことを考える時期に来ていると思います。
そのことを一家の主として考えて欲しい」
と言い出したのです。
さあ、困りました。
家を持つと言っても、貯金は少ないし、
首都圏の土地は高い上に、更に高くなる気配で、
私は妻にどう答えていいかわかりませんでした。
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