第313回 (旧暦1月7日)
今年もワカメ採りのシーズンが始まりました
このあいだの日曜日、稲村ヶ崎(鎌倉)の海岸は
ときならぬ人出で賑わいました。
前日の強風で海が荒れ、今年はじめてのワカメが打ち寄せられて、
それを拾う人がどっと繰り出してきたのです。
鎌倉の海は、沖合いにかけて岩礁が発達して
天然ワカメを多く産し、毎年今ごろから春にかけて、
海が荒れた日の翌日には、
根離れしたワカメが大量に流れ着きます。
そのため、昔から地元の人たちのあいだには、
そういう日には1日仕事を休み、
早朝から浜へ降りてワカメ拾いをする習慣があったようです。
仙人の経験でも、ちょっと馴れてくると、
3時間も精を出せば家族が食べる1年分くらいの量は
ラクに拾えるようになりますから、
それも当然のことといわねばなりません。
また、ワカメという海藻は、
11月ころ発芽して翌年の5〜6月ころに成熟するため、
一般には3〜6月に採取されますが、
「若芽」あるいは「稚海芽」などと書かれるごとく、
冬から早春にかけての若いものほど柔らかくて味もよいものです。
ということは、今の季節のワカメ拾いの習慣は、
一番ウマイ時期のものを1年分収穫するという、
まことに合理的な知恵ということになるでしょう。
こうして収穫したワカメは、生のまま三杯酢にしたり、
さっと湯にくぐらせて程よい大きさに刻み、
酢醤油やマヨネーズで食べると、干ワカメの味しか知らない人は、
おそらく目の玉が飛び出るほどビックリするに違いありません。
もちろん、生で食べる以外のほとんどは
自家製の干ワカメにして保存しますが、
その干ワカメといえば、黒褐色のものと緑色のものと
2種類あることに気が付かないでしょうか?
この干ワカメの色の違いは、ワカメの種類の別ではなく、
実は加工法の違いによるものなのです。
干ワカメの製法には、大きく分けて、
湯通ししてから干す方法と、
海水または真水で洗うだけで湯に通さず干す方法とがあり、
緑色をしたものは前者の方法で、
黒褐色のものは後者の方法で作られたものです。
湯通ししたものは短時間で干し上がるため加工は楽ですが、
湯通しすることで風味が損なわれることになりますから、
食味で選ぶなら、湯通しをしていない
黒褐色のものを選ぶことをすすめます。
ちなみに、鎌倉の住人の自家製干ワカメは、
海水で洗ってそのまま素干しするもので、
乾燥の時間は少しかかりますが、風味はこれが最高です。
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