第311回 (旧暦12月30日)
トウガラシのスゴイ効力
今日は寒に入って16日目ですから、
二十四節季の「大寒(たいかん・だいかん)」で、
これからの約半月が寒さの絶頂期にあたります。
そこで今日は寒さついでに
雪山歩きの話でもしておくことにしましょうか。
仙人が初めて雪の山へ登ったのは中学1年生のときで、
鈴鹿山脈の御在所岳(1212m)という山でした。
三重県と滋賀県を岐ける鈴鹿山脈は、
標高こそ低いものの、琵琶湖を挟んで
若狭湾から直接日本海側の季節風が吹きつけるため、
思いのほか積雪量が多く、中央部に位置する御在所岳周辺でも
1mを超える深さになることも珍しくありません。
この山には、今でこそ山麓の湯ノ山温泉から
ロープウェイが架けられていて、
これに乗れば山頂のスキー場まで20分足らずで到達できますが、
そのころは、まだ何もない時代でしたから、
自分の足で登るしかないのです。
さて、その初めての雪山へ登るとき、
仙人はいったいどんな履き物を履いていったと思いますか?
実は、ナント「地下足袋」を履いて野山を歩いているのですナ。
仙人が中学1年のときといえば、昭和31年で、
当時はまだ皮製の山靴などほとんど見られない時代でしたから
山へ登る人たちは、米軍放出の軍靴とか地下足袋とかを
思い思いに利用していたのです。
地下足袋というのは底の部分を除けばすべて布製のため、
寒いのは当然のこと、雪の中を少し歩けば、
すぐグショグショに濡れてしまい、
たちまち足の感覚がなくなってしまいます。
そこで仙人は、どんな工夫をしたかといいますと、
足の指と指の間に1本ずつトウガラシ(タカノツメ)を挟み、
その上から先割れの靴下を2枚履き、
これを油紙で包んで地下足袋を履くことにしたのでした。
この方法は、前の年の秋に
鈴鹿の炭焼きの爺さんに教えられたことですが、
トウガラシを挟むことで血流が促進され、
雪に濡れても凍傷にならないのです。
ただし、2日間歩いた山から帰ってビックリしたことには、
トウガラシを挟んだ指の皮が
すべてペロリと綺麗に剥がれていたではありませんか!
トウガラシに血流促進や皮ふ刺激作用があることは
広く知られていますが、
その効力はこんなにもスゴイものなのです。
|