第301回 (旧暦12月20日)
末尾に「ナ」が付く名前の野草はすべて食べられます
昨日は、3か月も早く多摩川の河川敷に
顔を出した若菜の話をしましたが、
そういえば、野草のなかには
末尾に「ナ」をつけて呼ばれる名前のものが
たくさんあることに気が付かないでしょうか。
たとえば、アマナ、ソバナ、ナズナ、ニガナ、ヨメナ……
といったようにです。
この末尾に付けられる「ナ」というのは、
漢字に置き換えると「菜」の意味で、
食用できる草類であることを表わしています。
「菜」というのは、もともと食べられる草本全体を差す言葉で、
前にも一度書いたことがありますが、
古くには、山で採れる食べられる野草を「山菜」、
野で採れる食用野草のことを「野菜」、
水辺で採れるそれのことを「水菜」などと呼び分けており、
これらのうち、食味が良く、育てやすいものが
しだいに栽培されるようになってきて、
やがて、その栽培したもので
消費の多くをまかなえるようになってくると、
この栽培されるものを「圃菜(ほさい)」
もしくは「蔬菜(そさい)」と呼ぶようになったのが
日本における「菜」の歴史であったのです。
したがって、「京菜」「壬生菜」「野沢菜」「水かけ菜」など、
地方特産の食草がほとんど「菜」の文字を付けて呼ばれるのも
そのためですし、「若菜」「青菜」というときも、
すべて食草のことを意味していると理解して間違いありません。
ちなみに、上記の食草を漢字で表記すれば、
ナズナこそ「薺」という漢名を用いるものの、
アマナは「甘菜」、ソバナは「蕎麦菜」、ニガナは「苦菜」、
そしてヨメナは「嫁菜」となり、
それぞれにその食草の特徴や由緒などを
端的に表わしていることに気が付きます。
また、上の5種はいずれも標準和名ですが、
ヒユナ、ヒュウナ(イヌビユ)、ヨシナ、
シズクナ(ウワバミソウ)、ウルイナ(ギボウシ)、
コゴミナ(クサソテツ)、イワナ(ダイモンジソウ)、
クジナ(タンポポ)、アサナ(ハンゴンソウ)、
アズキナ(ナンテンハギ)、ショウブナ(ヤブカンゾウ)等々、
地方名でも「ナ」を付けて呼ばれるものがたくさんあり、
これらもすべてその地方で食用されてきたのですから、
食草のレパートリーを広げるヒントとして参考にするとヨロシイ。
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ナズナ |
ソバナ |
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コゴミナと呼ばれるクサソテツ |
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