第300回 (旧暦12月19日)
多摩川の川原には、もう春の若菜が出ています
昨年12月半ばのことですが、
例の「1か月1万円生活」のスタッフと一緒に
また多摩川の川原を歩いてみました。
すると、驚いたことに、枯草を刈り払った広場の一画に、
もうヤブカンゾウの新芽が
青々と萌え立っていたではありませんか。
海に面した鎌倉でも、
仙人が例年ヤブカンゾウの目を摘み始めるのは
3月に入ってからのことですから、
これは異常な早さといわなければなりません。
仙人も、正月前後にカンゾウの芽が欲しいときは、
三浦半島の先端地域に出掛けることがあるものの、
ここで取れるのは海岸性のハマカンゾウで、
ヤブカンゾウやノカンゾウではないのです。
たしかに、多摩川中・下流域の河川敷は、
1日中くまなく陽が当たり、
しかも伏流水域によって水分も十分に得られるため、
植物の生育にとってはきわめて都合のよい環境らしく、
もしこの一画でコメでも作れば
二期作も可能ではないかと感じられるほどです。
それと、都市部の公園などでも見られる現象ですが、
草刈りがひんぱんに行われるところでは、
刈り払った後にすぐまた新しい芽が出てきますから、
宿根性の植物では1年に2度
新芽を伸ばすことが珍しくありません。
仙人が見つけたヤブカンゾウも、
おそらくそうした条件が重なって顔を出したものと思われますが、
何はともあれ、仙人はその季節外れの新芽を
20本ばかり頂戴して帰り、
赤貝と一緒に酢味噌で和えてひと足早い春の味覚を味わいました。
そのヤブカンゾウは、ユリ科ワスレナグサ属の多年草で、
これの花の蕾を蒸してから乾燥させたものが
漢方の生薬や中国料理で使われる
「金針菜(きんしんさい)」です。
もっとも、正確に言えば、
本場の中国では「金針菜」は中国のホンカンゾウで作りますから、
日本生まれのヤブカンゾウ製金針菜は
その代用品ということになるでしょうか。
しかし、ヤブカンゾウの花にも
ヒドロオキシグルタミン酸やコハク酸などが含まれ、
本場産と変わらぬ作用(解熱)がありますから、
代用品とは言っても捨てたものではありません。
ちなみに、風邪などの解熱に用いるときは、
金針菜10〜15g(1回量)を
400ccの水で半量に煎じて服用するとよろしい。
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ヤブカンゾウの新芽 |
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