第298回 (旧暦12月17日)
「旧暦」の思想は今も日本人の心に生きています
今年は干支(えと)でいうと申年(さるどし)に当ります。
そこで今日は、新年にあたって
暦(こよみ)の話でもしておくことにしましょう。
現在使われている暦は、
太陽の運行や太陽年の長さを基準とした「太陽暦」ですが、
明治6年(1873)1月1日からこの暦法が施行されるまでは、
月の満ち欠けの周期と太陽年との差を
閏(うるう)年を設けて調整した
「太陰太陽暦(たいいんたいようれき)」が使われていました。
これが、「陰暦」とか「旧暦」と呼ばれる暦で、
原稿の太陽暦と比較して1か月近いズレがあるものの、
この暦のもとで発祥した生活行事や習わし、また農事などは、
こちらのほうが適合するため、
農山村部の生活では今もこの暦が生かされています。
一方、「干支」というのは、前漢時代(前202〜後8年)に
中国でとり入れられた暦法で、
「干」は「幹」、「支」は「枝」を意味し、
この干と支を組み合わせて暦日を数えるのです。
ちなみに、干は、
甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸の十干よりなり、
支は子、丑、寅、卯、辰、巳、午、未、申、酉、戌、亥の
十二支よりなり、この十干と十二支を組み合わせると、
10と12の最小公倍数は60になりますから、
60年で一巡することになります。
つまり、むかしから数え年で61歳を迎えると
「還暦」と呼んで祝うのは、
この十干と十二支の組み合わせが一巡する60年を生き抜いた
「長寿」を祝うものだったのです。
また、十干十二支は、時刻や方角を表わす
記号としての意味も持ち、
たとえば今年の干支である「申」の場合、
時刻では午後の3時(八ツ半)から5時(七ツ半)の時刻、
方角だと西から30度以南の方角(西南西)にあたります。
そしてこの「旧暦」という暦では、
十二支それぞれに動物を当てはめ、
その動物の生態や性質、伝説などど結びつけたり、
「木、火、土、金、水」という「五行説」や
「先勝、友引、先負、仏滅、大安、赤口」という
「六曜星」を組み合わせて、
相性や運勢の吉兆などを判ずる目安としたりする
人為的な要素も少なからず加えられてきましたから、
その仕組みを理解しないと、
なんともヤヤコシく思えるに違いありません。
しかし、逆にいえば、それだけ人びとの生活のすみずみまで
深く根を下ろしていたといえるわけで、だからこそ、
現行の暦に切り替えられて140年も経過した今日でも、
われわれの生活の根底に
脈々と生き続けているのではないでしょうか。
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今年の干支のサル |
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