第294回 (旧暦12月1日)
「布袋石」を探してみませんか
少し前に、漂流物の話を何回かしたことがありますが、
今日は正月を間近に控え、
ちょっとオメデタイ漂着物を紹介しておくことにしましょう。
「百聞は一見にしかず」ということで、
まず下の写真を見てもらいたいのですが、
これが何であるか判るでしょうか?
じつはこれはイルカの耳骨なのですが、
よく見ると、七福神の布袋(ほてい)様に似ていることに
気が付くはずです。
そのため、漁師たちの間では古くから「布袋石」と呼ばれ、
幸運をもたらすお守りとして重用されてきた歴史があります。
耳骨というのは、脊椎動物の内耳にある骨の俗称で、
平衡感覚をつかさどる三半規管に付属しており、
人間の場合でいえば、砧骨(きぬたこつ)
および槌骨(つちこつ)がこれに相当します。
イルカやクジラなどの海洋に棲む哺乳動物にも、
左右一対ずつの耳骨があり、
クジラのものもイルカとほとんど同じ姿をしていますから、
やはり「布袋石」と呼ばれています。
大きさは、イルカの場合で、
左右が28mm内外、高さが20mm内外ですが、
大型のクジラだと左右が60〜70mm、高さが40mm以上にも
及ぶものも少なくありません。
この耳骨は、主要な骨格部分から離れているために、
自然化で死亡して肉が失われてくると、いち早く脱落し、
骨格部分から遠く離れ、波の力で渚に運ばれてくるのでしょう。
仙人が写真の布袋石を見つけたのは、千葉県館山市の海岸と、
三浦半島先端の城ヶ島の浜辺ですが、
どちらもイルカやクジラの回遊地に近いため、
似たような立地の海岸であれば、どこでも見つかるはずです。
ただし、海岸全体をただヤミクモに渉猟するのではなく、
海岸を歩いていると必ず貝殻が固まって漂着している場所
(仙人はこれを「貝の墓場」と呼んでいます)がありますから、
この「貝の墓場」だけに絞って探すようにすることです。
ひとつ見つけると、しだいに目がなれてきて、
雑多な貝殻の中から案外たやすく
見分けられるようになってきますから、
正月に海の近くへ出掛ける予定のある人は、
年の初めの運試しに布袋石を探してみようではありませんか。
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イルカの耳骨。形が布袋様に似ているので「布袋石」と呼んで珍重する |
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