蓬莱仙人・大海淳さんの
身体にいい話

第292回 (旧暦11月28日)
忘年会で疲れた胃を癒してくれる古代薬

何日か前、古代メソポタミアの遺跡から出土した粘土板に
人類最古の「クスリ」の記録が残されていた、
ということを書きましたが、
日本における医療やクスリに関する最初の記録も、
本邦初の文書である『古事記』の中に登場します。

それは、鰐鮫に皮を剥がれた白兎を
大国主命(おおくにぬしのみこと)がガマの穂で治したという、
誰もが知っているアノ話です。
ガマは、北半球全体の沼沢地や湿地に広く分布する
ガマ科の多年草で、その花粉は「蒲黄(ほおう)」と呼ばれ、
止血や消炎、利尿などの作用がありますから、
大国主命はそのことを心得ていたといわなければなりません。

開国神話によれば、この国は「豊葦原瑞穂国
(とよあしはらみずほのくに)」と呼ばれたごとく、
いたるところに湿地が広がり、
葦をはじめとする湿生植物が生い茂っていたようですから、
これに混じってガマやコガマ、ヒメガマなどのガマ類も、
それこそ今とは較べようもない規模で繁茂していたことでしょう。
また、その「豊葦原」を構成する湿生植物で
「クスリ」として利用されたのは、白兎に使われたガマだけでなく、
実は、「豊葦原」の本体である葦も、
古くから薬用されていたのです。

「葦」は、もともとは「アシ」と呼ばれていたのですが、
「アシ」の音は「悪し」に通じるとして、
いつのころからか反意の「ヨシ(良し)」と呼ばれるようになり、
標準和名でもこの「ヨシ」が使われています。
ヨシは、高さ3mにも伸長するイネ科の多年草で、
もっぱら乾燥した茎を編んで
簾(すだれ)を作るのに利用されてきましたが
(これが夏の日除けに使われる「よしず」です)、
その根茎には、アスパラギンやペントザンを含み、
漢方では「蘆根(ろこん)」と呼んで、
むかつきや嘔吐感を伴う胃の炎症や利尿の薬として
利用されています。

そういえば、今はちょうど忘年会のシーズンで、
呑み過ぎてこんな状態を抱えている人もいるはずですから、
そんな人は週末に近くの水辺に足を運び、
ヨシの根を探してみるとヨロシイ。
用法は、地上部が枯れた季節(晩秋〜冬)に根茎を掘り、
ひげ根を除いて1cm程度の長さに細断して乾燥させてから、
1回量5〜10gを200ccの水で煎じて服用します。

冬のアシ原 アシの根

刈り取ったアシの乾燥(琵琶湖)

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