蓬莱仙人・大海淳さんの
身体にいい話

第288回 (旧暦11月24日)
「漢方薬」を思い違いしていませんか?

このコラムでは、身のまわりにある植物を
健康生活に活用する知恵や方法について
紹介することが多いのですが、ひょっとすると、
自然の草本を薬用すれば、
すべて「漢方薬」だと思い込んでいる人が
少なくないのではないでしょうか。

たしかに、「漢方」とか「漢方薬」の概念は
判りにくい部分があって、
間違った解釈をされることが多いようです。
そこで今日は、「漢方」や「漢方薬」とは
ソモソモどういうものなのか、
ということについて考えてみることにしましょう。

まず、「漢方」といえば、中国で生まれ、
中国で発達した医術だと理解している人が多いと思われますが、
実は、この解釈自体が半分は正解、
半分は誤解といわなければなりません。
どういうことかといいますと、日本の医学は、
たしかに中国生まれの医術体系が移入され、
その基本的な考え方や方法論はそのまま踏襲されてきたものの、
実際には、長い実践施術法が次第に確立されて、
独自の発展を遂げてきたということです。
それに、そもそも「漢方」なり「漢方薬」という呼称自体、
実はご本家の中国の言葉ではなく、
比較的最近の時代になって生まれた日本製の呼称であり、
このこともの正しい理解を妨げている
大きな原因といえるのかもしれません。

日本の医術の歴史は古い時代に中国から移入されて
独自の発展を遂げてきた「中国式医術」を柱とし、
江戸時代中期になって「蘭法」と呼ばれるオランダ医学が
これに加わってくるのですが、やがて明治になると、
国策としてドイツ医学が導入され、
これを「西洋医学」と呼ぶようになったのです。
そして、「西洋医学」という言葉が生まれると、
これまでの特別の名称を持たなかった
従来の「中国式医術」のことを初めて
「漢方」と呼んで区別するようになり、
それに合わせて漢方で使われる薬のことを
「漢方薬」と呼ぶようになったのでした。

ところが、さらにヤッカイなことに、
当時は、漢方も西洋医学も、
使用する薬のほとんどが自然の草根木皮類でしたから、
これら自然物を利用した薬材を差す
「生薬(しょうやく)」という言葉が使われていたのです。
そのため、西洋医学で生薬がほとんど使われなくなった現在では、
「生薬」というと、
今日もそれを使用する漢方の専売特許のように思い込まれ、
「生薬」イコール「漢方薬」だと
早合点されることになったのでしょう。

また、漢方薬というのは、
長期にわたる経験則や理論にもとづいて
漢方医によって処方されるものであり、
正確に言えば、同一の生薬を用いる場合でも、
漢方処方される場合のみ「漢方薬」と呼ぶことができ、
それに類した用法であっても漢方処方でないときは
「民間療法」になりますから、
この場合は「漢方薬」といわず「民間薬」と呼ぶのが正しいのです。


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