蓬莱仙人・大海淳さんの
身体にいい話

第284回 (旧暦11月20日)
冬に花咲く「葵の紋」

仙人は、小学生の時分からチョウを追っかけていましたから、
野の植物と馴染みを持つようになったのも、
元はといえば、このチョウの採集がそもそものきっかけでした。
それは、チョウという生物は
人間以上に植物と密接なかかわりを持っていて、
ある程度植物の知識を身に着けないと
採集も先に進むことができないからにほかなりません。

どういうことかといえば、
チョウはそれぞれの種類によって好みの食草が決まっており、
自分のコレクションを増やすためには、
それぞれチョウが好む食草を知ることが
必要になってくるということです。
これは、チョウに限らず、他の昆虫や鳥の場合も同じことで、
たとえば、ある鳥の姿を見たければ、
その鳥が好んで食べる実がなる木の元に佇むのが
手っ取り早い方法といえるでしょう。

仙人は、カンアオイとかウスバサイシンといった地味な野草と
子供の頃から馴染を持ったのも、
やはりチョウが取り持った縁のひとつで、
今では希少種となったギフチョウの食草のひとつでした。
したがって、カンアオイもウスバサイシンも、
ともにウマノスズクサ科の多年草で、
前者は常緑性、後者は冬には葉を落とす、
といった程度のことは早くから知っていたものの、
両者とも根茎にサフロールやオイゲノールといった精油を含み、
鎮痛、風邪、咳止めなどに効用のある
薬草であることを知ったのは、
チョウチョ採りから足を洗ってからのことだったのです。

さて、そのカンアオイとウスバサイシンですが、
漢方では、カンアオイの根茎を「土細辛(どさいしん)」、
ウスバサイシンのそれを「細辛(さいしん)」と呼び、
いずれも風邪、咳止め、気管支炎、鎮痛、利尿などに用いるほか、
民間でも風や咳止めに乾燥した根茎5〜10g(1日量)を
300ccの水で煎じ、3回に分けて服用する療法があります。

冬には枯れてしまうウスバサイシンのほうはさておき、
常緑性のカンアオイはちょうど今ごろから
花を咲かせる時節になりますから、冬の低木を歩くときは、
ちょっと両脇の足元に目を配らせて
「葵の紋所」に似た葉っぱを探してみるとよろしい。
ちなみに、カンアオイにはいくつかの地方変種がありますが、
鎌倉の三浦の山で見られるのはカントウカンアオイといって、
これが基本種にあたります。

カンアオイ

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