第277回 (旧暦11月13日)
タンポポを正確に見分けられますか?
仙人は、仕事も遊びも含め、
人を連れて野山を歩く機会が多いのですが、
そんな折、誰でも知っているはずの身近な野草でも、
それをキチンと識別できる人が
意外に少ないことに気付かされます。
その代表的なものがタンポポで、
ニホンタンポポとセイヨウタンポポという
類似種間の区別という以前に、
たとえばノゲシ類やニガナ類のごとく
花の色や大きさがちょっと似ているものと
正確に判別できる人となると
それほど多くはないのではないでしょうか。
ちなみに、「あなたはタンポポを知っていますか?」と訊かれれば、
大人も子供も合わせ、すべての人が
「知っている」と答えるはずですが、それは正確に言えば
「ナントナク」知っている「つもり」であることが多いのです。
もちろん、ふだんの生活で
それをただ眺めて楽しんでいるだけならば、
それでも一向にさしつかえはないのですが、
食用にしろ薬用にしろ、それを体内に摂り入れるとなると、
やはり「ナントナク」知っている「つもり」では
済まされなくなってくるでしょう。
実は、山菜の誤食事故などのほとんども、
こうした「ナントナク」知っている「つもり」で
起こっているのが実情なのです。
その反面、それぞれの植物を正確に識別できるようになると、
食用なり薬用なり、さまざまに活用することができるわけですから、
まずは身近にあって目にする機会が多いものだけでも、
よく観察して確実にその特徴を憶えておく習慣を
身に付けておくことをすすめます。
さて、そのタンポポですが、
やわらかな葉はサラダやおひたし、和えもので、
根はキンピラなどで食用できるうえ、
すぐれた解熱、発汗作用があって
手近な風邪薬としても利用できる重宝な薬草ですから、
とりあえず、このタンポポを
正確に識別できるようにしておこうではありませんか。
しかも、さいわいなことに、関東南部以西の暖地では、
冬でも陽当たりのよい場所では元気な姿を見ることができますので、
この機会に「ナントナク」知っている「つもり」から、
「確実に判別できる」ようにしておくとヨロシイ。
なお、タンポポを風邪に用いるときは、
乾燥した全草10g(1日量)を500ccの水で煎じ、
食後3回に分けて服用します。
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タンポポ |
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