第266回 (旧暦10月30日)
「糅めし」は「すいとん」より上等な食べ物です
昨日は「おしん」が食べた「大根めし」を紹介しましたから、
今日はそのついでに、もうふたつばかり代表的な「糅めし」を
ご披露しておくことにしましょう。
そのひとつは、昨日とおなじダイコンの糅(かて)でも
葉っぱを使う「ダイコン葉めし」です。
これは、2〜3日塩漬けしたダイコンの葉を細かく刻み、
両手で強く握ってしっかりと水気を切ってから
コメに混ぜ合わせて炊くもので、コメ1.8Lに対して
水切りしたダイコン葉をふたつかみほど加えます。
炊き方は、昨日の「ダイコンめし」とおなじでかまいませんが、
こちらの方は塩味が効いているために
ふつうの「ダイコンめし」より食べやすく、
続けて食べても飽きにくいという利点があります。
そして、もうひとつは、サツマイモを糅とする
「サツマイモめし」です。
用意するものは、コメ1.8Lに対して中くらいのサツマイモを3本。
作り方は、まず水洗いしたサツマイモをサイの目に切り、
水に浸して十分にアクを抜いておきます。
これをザルに上げて水を切り、コメと混ぜ合わせてから
塩ひとつまみを加えて炊き上げればよろしい。
昨日の「ダイコンめし」もそうですが、
これらの糅めしは、冷えるとトタンに食べにくくなりますから、
できるだけホカホカを食べるようにすることです。
こうした糅めしは、基本的には昭和初期までの凶作時に
農山村地域で食べられていたものですが、
実は、昭和20年8月の敗戦直後の2、3年間は、
都市部ではこの糅めしすらろくすっぽ口にできない状態で、
麦と雑穀を混ぜ合わせて粉に挽いた「食用粉」で
かろうじて生命をつないできたのでした。
ちなみに、当時もてはやされた「すいとん」は、
この「食用粉」を水でこねて団子にちぎり、
塩味だけの程度のうす味の汁で煮たものでしたから、
これと較べれば、凶作時の救荒食であった「糅めし」も
まだまだ上等であったといわなければなりません。
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